ザ・クインテッセンス 2023年10月号
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 そして,この歯間部CALが根面被覆術を行った際の治療結果に大きな影響を与える11.この分類中,Recession Type1(RT1)は完全根面被覆の可能性が74%10であるが,RT2になると24%と極端に下がり,RT3は完全根面被覆は不可能であることが報告されており(図2),とくに歯間部のCALが3mmを超えてくると,結合組織移植(connective tissue graft:CTG)を用いても予知性が低くなることが示されている(図3)11.それほど歯間部のCALが根面被覆術の結果に与える影響は大きく,これまでRT2でも歯間部のCALが大きいものは根面被覆術を行うこと自体がためらわれたり,満足できる結果とならないことが多かった. そのため,根面被覆術の際,歯間乳頭を同時に挙上することができればCRCのチャンスも増えると考えられるが,Nordlandらの報告12にあるように,いったん失われた歯間乳頭を再建することは容易ではない.その主な要因として,狭いエリアでの処置を強いられること,血液供給が限られることを挙げている.また,Rasperiniらは将来の方向性として,歯肉退縮量(MGJと比較)MGJを超えない完全な根面被覆が期待できる図1 Millerの分類.参考文献8より引用.Class1視診 プロービング エックス線喪失なし(Fill)MGJを超える完全な根面被覆が期待できるClass 2歯間部の骨・軟組織の状態歯間部の骨・軟組織の位置CEJ~辺縁歯肉部分的な根面被覆しか期待できないClass3喪失あり(Non Fill)退縮した辺縁歯肉の位置根面被覆は期待できないClass4the Quintessence. Vol.42 No.10/2023—219137▼Millerの分類 歯肉退縮に対して,これまでさまざまな根面被覆術が行われてきた.最大の目的は完全根面被覆(complete root coverage:CRC)であるが,これが達成できるかを術前の状態で分類したものがMillerが1985年に示した分類(図1)7,8である.これによるとMillerのClass3,4は歯間乳頭の退縮を認めるケースであり,CRCは困難とされてきた.その後,根面被覆術の術式の進歩もあり,Class3でも必ずしもCRCは不可能ではなく9,2011年にCairoらはより歯間部のアタッチメントロスに着目した分類10を示し,現在ではこちらがより実用的で術前の評価に有用といわれている. Cairoの分類は,Millerの分類におけるClass1,2の違い(歯肉退縮が歯肉歯槽粘膜境〔MGJ〕を超えるか否か)を省き,アタッチメントロスを歯間部と頬側で比較し分類したものである.歯間部歯周組織の破壊の程度を,歯間部のクリニカルアタッチメントレベル(CAL=歯肉退縮量+歯肉溝プロービング値)を用いてより具体的に示した点が優れており,近年の根面被覆術の結果に合致した分類となっている.

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