ザ・クインテッセンス 2023年10月号
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3演者論202Movie文 「噛み合わせがだんだん変わってきた」,「昔は前歯でものが噛めていたが,だんだんと噛めなくなってきた」などの症状を主訴に来院された患者に出会ったことはないだろうか? 図1の患者のように,以前は歯列に審美的および機能的な問題はなかったが,後天的に開咬が発症する患者が一定数存在する.後天的開咬が生じると,咀嚼障害や発音障害,重度になると審美障害をも引き起こす1,2.また,開咬が生じた結果,少数歯で咬合力を負担することになり,それらの歯に二次性の咬合性外傷を引き起こし3,最悪の場合は抜歯に至らしめる.以上のように,開咬をきっかけとして咬合崩壊が起こるリスクがあるため,決して放置すべきではない. 後天的開咬には,前歯に生じるもの,臼歯に生じるもの,両側あるいは片側に生じるものがあり,また程度が著しいものや,咬合紙が抜けてくる程度の軽微なものまで,さまざまなパターンが存在する. 後天的開咬の原因は多種多様であり,治療法も複数存在するなかで,それぞれの病態および患者の身体的,心理社会学的特性に応じた最適な治療法を選択する必要がある.また,噛み合わせが変化してきた事実に対する患者の不安感が大きいことから,患者の精神面に対する配慮も必要である.まずは開咬の原因を突き止め,その後の治療法について適切に説明することにより患者を安心させる配慮も歯科医師には求められる. 本稿では,さまざまな後天的開咬が存在することを読者の皆様に知っていただき,さらには後天的開咬患者に出会った際の診断,治療法について解説したい.髙岡亮太大阪大学大学院歯学研究科 クラウンブリッジ補綴学・顎口腔機能学講座連絡先:〒565‐0871 大阪府吹田市山田丘1‐8Ryota Takaokaキーワード:後天的開咬,顎関節,下顎頭吸収,画像診断the Quintessence. Vol.42 No.10/2023—2202スマホで動画が見られる!Diagnosis and Treatment of Acquired Open Bite48P52,53,54(使い方:P15参照)特 集 2後天的開咬について考える―その原因と治療オプション―はじめに:後天的開咬が口腔に及ぼす影響

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