ab 後天的開咬は,「噛み合わせがだんだん変わってきた」という患者の主訴により発覚する.後天的開咬の発生が確認できるもっとも信頼できる情報としては,患者が過去に撮影したスマイル時の写真あるいは過去に歯科医院で撮影された口腔内写真がある.まずは過去の画像や経過観察中の咬合変化の確認により,後天的開咬の発生が確実なものとなってから原因の追求を開始する. 後天的開咬は結果であって,疾患そのものではない.咬合関係は主に顎関節,歯列,口腔周囲筋により安定が図られている.したがって,後天的開咬は顎関節,歯,筋のいずれか1つあるいは複数の器官の異常により発症する(図2). 以下に各部位に分けて解説を進める.1-1.関節性の後天的開咬 関節が原因で起こる開咬に関連するのは,大きく分けて下顎頭骨変化による開咬,顎関節の浮腫や滲出液による開咬,関節円板に関連する開咬がある.可能性のあるすべての疾患を紹介することはできないが,以下に具体例を挙げながら解説を進める.1)下顎頭骨変化による開咬 下顎頭の著しい吸収にともない,下顎が反時計回りに回転し,開咬が生じると考えられている(図3)4,5.疾患の種類としては,特発性下顎頭吸収/進行性下顎頭吸収(ICR/PCR),変形性顎関節症,顎関節強直症(顎関節部の骨性あるいは繊維性の癒着)などがある. 下顎頭骨変化は両側に発症するものと,片側に発症するものがある6.両側に著しい下顎頭骨変化が発生した場合,矢状面的に下顎がローテーションし,結果として両側の大臼歯だけが接触し,その他の歯が開咬になる(図4).片側に発生した場合は,さら図1a,b 来院時に開咬が発症している患者.以前の写真を見せてもらうと,歯列に審美的および機能的な問題はないことが推察された.こうした,開咬が後天的に発症する患者が一定数存在する.the Quintessence. Vol.42 No.10/2023—2203491.後天的開咬の原因“後天的に開咬が生じた患者”の,その開咬の理由はなんだろうか??
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