3演者論202文 近年,審美歯科に関する国民の意識の向上,成人矯正の一般化などにより,根面被覆や歯槽堤増大の需要が増加してきている.根面被覆術は,歯槽骨へのアプローチがほとんどないため,審美性を要求されない部位であれば,歯周外科処置の経験の少ない歯科医師でもチャレンジしやすい術式である. 根面被覆術を行う際に必要な“結合組織移植術”は,本邦においても多くの講習会が開催され,習得するための機会が整いつつあるように思われる.われわれsurgical basic course(SBC)でも,2009年から歯周形成外科の基本を,延べ631人の受講生に伝えている(図1). そのなかで,「口蓋から移植片を採取することの困難さ」が結合組織移植術に挑戦するにあたって1つの壁になっているように思われる. そこで本稿では,より簡便かつ安全,確実な新しい結合組織採取法である“IDG tech(intraoral de-epithelized graft harvesting technique using CO2 laser)”を提案させていただく. 結合組織移植術における移植片の採取方法は,1974年にEdelらがtrap door technique1を報告したことにはじまり,L-shape incision2,single incision3,tuberosity graft4など,さまざまな方法が報告されている(図2). 採取プロトコールの発展にともない,より低侵襲な切開デザインとなってきている傾向がある.しかし,これらの方法はアプローチする範囲が増加しており,移植片の採取量は術者の経験や技量に大きく依存するものになっている. また,2010年にZucchelliらによって発表されたextra oral de-epithelized graft5(図3)は,遊離歯肉移植術の要領で口蓋から上皮がついたままの結合組織を採取し,口腔外で上皮層をメスで切離する方法であるが,上皮の残存や移植片の乾燥がネックとなっていた.94三條直哉*/宮地栄介*1/木下富貴*2/白井健太郎*3/佐藤大典*4/青井良太*5*東京都開業 三條歯科医院,*1大阪府開業 宮地歯科医院,*2埼玉県開業 きのした歯科クリニック,*3神奈川県開業 SANTÉ DENTAL CLINIC,*4神奈川県開業 デンタルオフィス鷺沼,*5東京都開業 あおいデンタルクリニック代表連絡先:*5〒106‐0045 東京都港区麻布十番1‐7‐1‐2F(SBC事務局)Intraoral de-Epithelized Graft Harvesting Technique using CO2 LaserNaoya Sanjoh, Eisuke Miyaji, Tomitaka Kinoshita, Kentaro Shirai, Daisuke Sato, Ryota Aoiキーワード:IDGtech(intraoralde-epithelizedgraftharvestingtechniqueusingCO2laser),結合組織採取,CO2レーザーtheQuintessence.Vol.42No.10/2023—2248はじめに結合組織移植片採取法の変遷CO2レーザーを用いた新たな結合組織採取法
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