図1 根管治療と逆根管治療の流れ.両者は,感染源の除去・根管充填のスペースづくり・根管の封鎖という点で,同じコンセプトの治療である.the Quintessence. Vol.42 No.12/2023—264147根管治療と逆根管治療の流れ② 逆根管窩洞形成で根管充填のスペースをつくり,③逆根管充填で根管の封鎖を行う, という治療の流れは同一で,すなわち両者は同じ治療コンセプトであることがわかる(図1). したがって,逆根管治療の目的は,“根尖側から(逆から)根管治療を行う”ことであり,根尖切除し,根尖周囲の掻爬を行うことが主たる目的ではない.マイクロスコープを用いた拡大視野で,ベベルを最小限にした根尖切除,レトロチップを用いた歯軸方向に約3mmの逆根管窩洞形成,MTA(mineral trioxide aggregate)セメントもしくEBA(ethoxyben-zoic acid)セメントを用いた3mmの逆根管充填を行う逆根管治療(endodontic microsurgery)は約90%の高い成功率が報告されており1~9,根尖を切除することを目的とした根尖切除術(apicoectomy)と比較して10~14,予知性が非常に高い治療法であることは明らかである(図2,3). この逆根管治療という考え方は,過去の本誌の特集において井澤常泰先生(東京都開業)が示されていたものであり15,逆根管治療の本質を理解するうえでとても重要な考え方である.本稿においては,その考え方を最大限伝えるために,用語として「逆根管治療」を使用するが,これは「外科的歯内療法」と同義と考えていただきたい. そして,この逆根管治療の考え方の理解と同様に重要なのが,逆根管治療における観察=根管治療う蝕除去根管形成根管充填感染源の除去根尖切除,掻爬根管充填のスペースづくり逆根管窩洞形成根管の封鎖逆根管治療逆根管充填“Endodontic Surgical Inspection”である.われわれは,根管治療を行う際に未処置の根管やイスムス,破折線の精査をマイクロスコープ下で行う.これらと同様に,逆根管治療においても根尖部および根尖周囲の構造物を“観察”することは非常に重要で,この“観察”が適切に行えるかどうかが,逆根管治療の成否を分ける大きなポイントであると筆者は考える. 逆根管治療における観察=“Endodontic Surgical Inspection”は,質の高い逆根管治療を行ううえでもっとも重要といっても過言ではない.なぜなら,歯の解剖学的形態や過去の治療歴は症例によって千差万別であり,われわれ歯科医師はこれらを適切に対処するために,まず状態を把握すること,つまり“観察”が必須である. たとえば,未処置根管,側枝,イスムス,破折線などは,逆根管治療においても根管治療においても,見逃すと治癒しない,もしくは再発の原因になり得るため,必ず把握しなければいけない.そして,これらの構造物を見つけた際,根管治療ではその場では対処せずに貼薬仮封を行い,次回までに対策を練ることができる.しかし,逆根管治療においては,2.逆根管治療における“観察”とは
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