ザ・クインテッセンス 2023年12月号
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図1 2023年3月27日から28日の2日間に1,003人を対象にインターネット上でとられたChatGPTの認知度に関するアンケート結果.認知度は4割を割り込んでいる(参考文献1から引用・改変).*1 ディープラーニング:コンピュータに物の特徴やパターンを認識させる技術の1つで,人間の脳の仕組みを模倣した「ニューラルネットワーク」というものを使って,大量のデータから学習する.たとえば,犬や猫の写真をたくさん見せることで,犬や猫の特徴を覚えさせることができるといったように(ChatGPT-4による回答).*2 トランスフォーマーニューラルネットワーク:トランスフォーマーとは,文章や会話を理解するための技術である.文章のなかの単語がどういう関係になっているか,どの単語が重要かを見つけるのが得意であり,簡単にいうと,ディープラーニングは「物や形を認識する技術」,トランスフォーマーニューラルネットワークは「文章や言葉を理解する技術」といえる(ChatGPT-4による回答).*3 The International Journal of Periodontics & Restorative Dentistry:Quintessence International Publishing Groupにより隔月発行され,主に歯周病,修復治療およびインプラントにかかわる学際的情報を掲載している.*4 Google Apps Script(GAS):Googleのクラウドベースのプラットフォームで,JavaScriptのような言語を使用して,Google Workspace製品(スプレッドシート,ドキュメント,フォームなど)のカスタマイズや拡張を行うことができる.簡単にいえば,GASはGoogleのサービスを連携させたり,自動化したり,カスタマイズしたりするためのツールである.例として,PubMedで更新される論文のアブストラクトを自動で定期的にメール配信することが実現できる.the Quintessence. Vol.42 No.12/2023—266571ChatGPTの認知度に関するアンケート結果プラーニング*1とトランスフォーマーニューラルネットワーク*2を使ってチャットボット形式で人間のような会話を行うことができる生成型AIである(図2).2023年8月25日現在,デフォルトの無料版GPT-3.5および有料版GPT-4ともに2021年9月までの情報学習に限定されていたが,2023年11月8日現在,情報学習期間の限定は解除されている可能性がある(2023年9月27日付OpenAIのX[旧Twitter]より). わかりやすくいうと,チャットボット上ではユーザーがより詳細で具体的な命令文(質問)を伝えれば伝えるほど,明確な回答が返ってくる.その回答は,単純な文章の場合もあれば,きちんと構成されたレポート並みの長さの文章の場合もある.この回答は自然でそれっぽく感じられるものの,一般的にインターネット上に公開されている情報をソースとして回答を生成するために,内容は精度に欠けていたり,不正確な情報が提供されることも多々ある2. では,AIやチャットボットで論文を書くことは可能なのだろうか.可能であるとすれば,どの程度できるのか.論文執筆の過程の,どの部分にAIが役立つのか.筆者らはAIを使って論文が執筆ができるのかを試し,それをThe International Journal of Periodontics & Restorative Dentistry*3に寄稿する機会を得た3.本稿では,論文執筆のさまざまなステップでChatGPTやGAS(Google Apps Script)*4の適用を実証した結果を,読者のみなさんと共有したい.知らない“ChatGPT”を知っていますか?説明できるくらい知っている10.9%名前だけ聞いたことがある われわれは,実際の論文執筆における各過程での適用を,以下の工程に分けて実証を行った.1.主題(トピックス)の選定2.論文検索~論文内容の抽出3.臨床データの解析4.論文執筆5.論文翻訳 まず,実証に使用した各機能について簡単にまとめたい.63.0%26.1%ChatGPTによる論文執筆の適用への実証

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