ザ・クインテッセンス 2024年1月号
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1国際外傷歯学会の歴史第22回国際外傷歯学会世界大会 国際外傷歯学会(International Association of Dental Traumatology;IADT,図1)は,外傷歯学の父と呼ばれるコペンハーゲン王立歯科大学病院のDr. Jens Ove Andreasen(1935年8月19日~2020年9月26日)の研究成果と,正しい外傷歯治療を世界に広めようと(啓発するために)つくられた学会であるといえよう.Dr. Andreasenは,9歳の時に自転車で転倒し前歯を強打した.それが原因で歯は紫色に変色したが,どんな歯科医師もなぜそうなったか,どうすればいいかという彼の疑問に答えてくれなかった.彼は学校で,“ブルーティース(バイキングの王の呼び名でもある)”というあだ名でからかわれ続けたそうである.これが元で,彼は歯科大学に進学することを決意し,やがて外傷歯学の研究に没頭することになる. コペンハーゲンは当時も今も自転車社会で,けがをする子供(人)は絶えない.大学病院へ昼夜を問わず次々と運ばれる外傷患者(自転車でのけがは,脱落など程度の大きな外傷が多い)を,彼は家に帰る間もなく治療し続けた.Dr. Andreasenの最初の論文は,1966年の再植歯の歯根吸収の分類に関するものである1,2.そして,歯根膜の治癒,歯根吸収のメカニズム,歯髄の治癒,歯髄感染の問題を,その後のBlue Vervet Monkeyを用いた研究で解明してゆくことになる.彼の実験研究で得られた膨大な新知図1 第22回国際外傷歯学会世界大会は,2024年7月12日(金)~15日(月・祝)の日程で,一橋大学一橋講堂(学術総合センター)にて開催予定.the Quintessence. Vol.43 No.1/2024—003131

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