ザ・クインテッセンス 2024年1月号
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【利点】・歯肉弁を歯冠側に大きく移動できる.・移植片の位置づけが確実,容易.・トンネルテクニックよりも技術的に容易.【欠点】・瘢痕が生じやすい.・フラップの血液供給の点で不利.【利点】・審美的結果が得られやすい.・フラップの血液供給の点で有利.【欠点】・歯肉弁の歯冠側移動量が少ない.・移植片の挿入,位置づけが難しい.・CAFよりも,技術的難易度が高い.◆歯肉弁歯冠側移動術(coronally advanced flap;CAF)◆トンネルテクニックラップデザインといえるのではないだろうか. 本稿では以後,このフラップデザインのメリットと臨床応用法を症例をとおしてお伝えしていく. 2015年のAAP(米国歯周病学会)RegenerationWorkshopにおけるChambroneらによるシステマティックレビュー5によると,Millerの歯肉退縮分類(以下,Millerの分類)クラス1および2の歯肉退縮に対する根面被覆術は,根面被覆率,アタッチメントの獲得,角化歯肉幅および厚みの増大,長期安定性の観点から,結合組織移植術(ConnectiveTissueGraft;CTG)を併用する術式がゴールドスタンダードとされている. そして,CTGを行う際に用いるフラップデザインにはさまざまなものがあり,単独歯か複数歯か,歯肉退縮量,角化歯肉幅,軟組織の厚み,審美的な観点などにより使い分けや組み合わせを行う必要があるが,なかでも複数歯における根面被覆術の場合,CAF(Coronallyadvancedflap)6,トンネルテクニック7によって,歯肉弁を歯冠側に牽引し被覆するのが代表的なものとなり,近年VISTAも注目されている.CAF,トンネルテクニックの特徴を図1,2に示す. 基本的には,これらの特徴を踏まえ,これに患者の条件および術者の考え,慣れなどを加味してフラップデザインを選択すれば,どの方法を用いても良好な結果が得られると筆者は考えているが,下顎の複数歯重度歯肉退縮に関してはVISTAの選択に大きな優位性があると考えている.図1 歯肉弁歯冠側移動術(coronally advanced flap;CAF,乳頭部を切離し,フラップを翻転する手法)の利点と欠点.図2 トンネルテクニック(乳頭部を切離せず,歯肉溝内切開からトンネル形成する手法)の利点と欠点.[著者注] 以後,「VISTAテクニック」と「VISTA」という言葉をそれぞれ以下の定義で使い分け,使用していく.・VISTA:可動粘膜内縦切開から形成する全層弁というフラップデザインの意で使用.・VISTAテクニック:上記フラップデザインに加え,縦切開部からの結合組織/代替材料の挿入,スーチャーボンディングを用いたフラップの歯冠側移動による根面被覆の組み合わせの意で使用.the Quintessence. Vol.43 No.1/2024—0055551.根面被覆術への適応とそのメリット

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