ザ・クインテッセンス 2024年4月号
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65%00%図1 クラウンによる修復治療過程で,約10%の歯髄が歯髄壊死する可能性がある(参考文献2より引用・改変).1)世界中で注目されている“移植”泉 まずは,なぜ2024年のいまになって“自家歯牙移植,再植”(以下,両方に共通する場合は“移植”とする)のテーマで座談会を行うのかについて説明させていただきます. 学会や勉強会などの場面でお会いする先生方に移植について話を聞くと,「インプラントで十分じゃない?」「インプラントは行っているが移植は行っていない」という声をよく聞きます.また,若い先生であれば,「移植を行ってみたのですが,なぜかうまくいきません」といった相談も受けます. これらの意見について考えてみると,移植を行わない理由の1つとして“成功率の低さ”が浮かび上がってきます.確かに1990年代では「やってみないと成功するかわからない」といったイメージがあったかもしれませんが,現在では,科学的根拠はもちろんのこと1,臨床研究データも多く報告され,エビデンスとして確立されており,世界中でも注目されている術式となっています. 海外(とくにヨーロッパ)では移植が見直されており,とくに前歯部ではインプラント治療を行わず,移植を第一選択にしているという考えの先生方もおり,私もその考え方には共感できます. 本座談会では,スタディグループの垣根を超えて,斯界を牽引する先生方と,移植のさまざまな魅力,また利点だけでなく欠点も含めて,自家歯牙移植および再植の現在地を探っていきたいと思います.泉 移植は,複数歯欠損に対して行う場合も稀にありますが,基本的には1歯欠損に対して行う治療だと考えてよいと思います.その1歯欠損への治療は,多くの場合でブリッジもしくはインプラントが選択されます. ただし,私は日常臨床のなかでなるべくブリッジを避けたいと考えています.なぜなら,支台歯形成を行った後に歯髄壊死に至るリスクがあるからです(図1)2.もちろんこれによってすぐに歯の喪失につながるわけではありませんが,将来的に根管治療が必要になったとき,また生涯にわたる長い経過も考慮すると,抜歯に至るリスクがあります.そのため,私はできる限り歯を削りたくないと考えており,それは多くの先生方の意見と一致しているのではないでしょうか. では,支台歯を削りたくないから,ブリッジは避けたいとなると,次に“インプラント”という選択肢がでてきます.インプラントであれば,両隣在歯を削る必要がないですからね.私自身,日常臨床のなthe Quintessence. Vol.43 No.4/2024—072733支台歯形成を行うことによる歯髄壊死に至る可能性ステージ1ステージ2印象採得前治療前歯髄壊死(EPT-)の数と割合ステージ3補綴装置装着直前119%1. なぜ2024年のいま,移植を行うのか?2) 1歯欠損に対して移植をなぜ選択するのか?

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