⁃米国歯内療法専門医におけるNi-Tiロータリーファイルの使用率⁃ケイ酸カルシウムの水和反応を硬化機構とするバイオセラミック系シーラー 近年,歯内療法領域の進歩は目覚ましく,多くの器具や材料が開発されている.ニッケルチタン(Ni-Ti)ロータリーファイル,Mineral Trioxide Aggre-gate(MTA)に代表されるバイオセラミックマテリアル,マイクロスコープ,超音波機器など,その種類を挙げれば枚挙にいとまがない. そのなかで,根管拡大形成に用いるNi-Tiロータリーファイルは,その有用性が示され,上市から約30年が経過した現在でも毎年多数の製品や論文が発表されており,今も歯内療法領域のホットトピックスの1つである. 2009年に行われた米国歯内療法専門医に対するアンケートでは,59.9%の専門医がNi-Tiロータリーファイルを使用していると回答したのに対して,2020年の同様の報告では98.3%とその使用率が上昇している1,2(図1).また,日本において2019年に行われた調査では,全国29大学中16校が学生教育でNi-Tiロータリーファイルを使用しており,26校の診療科でも使用しているとの報告もある3.このような歯科教育への導入を鑑みると,今後Ni-Tiロータリーファイルの使用率はさらに増加すると推測される.Ni-Tiロータリーファイルは,概念的に最新図1 米国歯内療法専門医におけるNi-Tiロータリーファイルの使用率(参考文献1,2より引用・改変).図2 ケイ酸カルシウムの水和反応を硬化機構とするバイオセラミック系シーラー,Bio-C Sealer(Angelus Japan,ヨシダ).2009年Ni-Tiロータリーファイルの使用率59.9%2020年98.3%the Quintessence. Vol.43 No.5/2024—092129の器具というよりも,根管拡大形成を行う際の標準的な器具になったといえるかもしれない. 歯内療法領域におけるバイオセラミックマテリアルの導入は,1998年に発売されたMTAセメントのProRoot MTA(デンツプライシロナ)に始まる.Pro-Root MTAは,ケイ酸カルシウムを主成分とする良好な封鎖性と生体親和性を兼ね備えた水硬性セメントである.ProRoot MTAの発売を皮切りに,多くのケイ酸カルシウムを主体としたセメントやプレミックスタイプの根管充填用シーラーなどが開発されてきた.プレミックスタイプのバイオセラミック系シーラーは,従来の根管充填方法の概念を変える画期的なものであった.バイオセラミック系シーラーは,北米での発表から10年近くが経過した2020年に,日本においてもケイ酸カルシウムの水和反応を硬化機構とするシーラーが水酸化カルシウム系歯科根管充填材料として医薬品医療機器法で承認を得た(図2). 2017年に行われた国際調査(北米,ヨーロッパ,アジア/オーストラリア,南米,アフリカ)では,94.8%の歯科医師(歯内療法専門医の認知率:97.6%,一般歯科医の認知率:83.5%)がバイオセラミック系シーはじめに
元のページ ../index.html#2