ザ・クインテッセンス 2024年5月号
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1)抗菌薬の不適切使用による薬剤耐性菌の増加2)求められる薬剤耐性(AMR)対策薬剤耐性(AMR)とは 抗菌薬は現代の医療において重要な役割を果たしており,感染症の治療や患者の予後の改善に大きく寄与してきました.一方,抗菌薬には,その使用にともなう有害事象や副作用が存在することから,抗菌薬を適切な場面で適切に使用することが求められています3. 近年,不適切な抗菌薬使用にともなう有害事象として,薬剤耐性菌とそれにともなう感染症の増加が問題となっています.不適切な抗菌薬使用に対して,このまま何も対策が講じられなければ,2050年には全世界で年間1,000万人が薬剤耐性菌により死亡することが推定されており4,これは現在のがんによる死亡者数(800万人)を大きく超える数です(図2).図1 耐性を獲得した細菌やウイルスが増加すると薬が効かなくなり,これまでは適切に治療すれば軽症で回復できた感染症の治療が難しくなって重症化しやすくなり,さらには死に至ることもある.the Quintessence. Vol.43 No.5/2024—096775また,1980年代以降,新たな抗菌薬の開発は減少する一方で,病院内を中心に新たな薬剤耐性菌の脅威が増加していることから,将来的に感染症を治療する際に有効な抗菌薬が存在しないという事態になることが危惧されています5. 前述のように,特定の種類の抗菌薬が効きにくくなる,または効かなくなることを薬剤耐性(AMR)といいます.耐性菌が増えると抗菌薬が効かなくなることから,これまでは感染・発症しても適切に治療すれば回復できた感染症が重症化しやすくなり,さらには死亡に至る可能性が高まります.薬剤耐性の拡大を防ぐため,抗菌薬は「必要な場合」に「適切な種類」を「適切な期間」,「適切な量」使用する必要があります.抗菌薬については,不適切な使い方をす抗菌薬薬剤耐性菌薬剤耐性菌が増殖感染症の治療が難しくなる1.なぜ,いま抗菌薬の適正使用が求められているのか

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