ザ・クインテッセンス 2024年7月号
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the Quintessence. Vol.43 No.7/2024—137737再根管治療に至る原因補綴学的問題生物学的問題1)再根管治療に至る原因 筆者は,再根管治療に至る原因を“補綴学的問題”“生物学的問題”“医原性の問題”の3つに大別している.本項ではそれら3つについて解説する.a.補綴学的問題 補綴学的問題とは,すでに装着されているクラウンやコア周囲にう蝕が存在しているために不適合補綴装置となった場合や,保険治療で装着した補綴装置からセラミックスなどの保険外治療に移行した際に,残存歯質の関係で根管内に維持を求める場合などに生じた問題のことである. 根尖病変はないが根管充填の質に問題がある場合は,補綴処置後に根尖病変が形成されることがないように根管治療をやり直す必要が生じる(図1).b.生物学的問題 生物学的問題とは,根管内に存在する側枝や歯根表面から生じる外部吸収,または根尖孔外などの感染が原因で再根管治療が必要となる問題である. 過去の根管治療の問題というよりも,その歯がもとからもっている固有の問題であるため,再根管治療を行ってから外科処置(逆根管治療)に移行する場合も存在する(図2).c.医原性の問題 医原性の問題とは,未処置根管の存在や不良な根管充填,穿孔やレッジ形成など,側枝や歯根吸収などの個々の歯がもつ問題が原因ではなく,処置を行う歯科医師の知識や技術不足で招いた問題のことである. そして,残念ながらこの問題が再根管治療になる理由としてもっとも多いと筆者は感じている.医原図1 患歯は₅₆.患者は補綴装置のやり替えを希望しており,根管充填が十分でないため再根管治療を行ってほしいとのことで,紹介元から依頼を受けた.患歯を確認したところ,根管充填は十分でないが根尖病変は認められなかった.今後,根尖病変が形成される可能性もあるため,再根管治療を行うことにした.図2 患歯は₂.患者は当該部の瘻孔を主訴に来院.瘻孔からGPを挿入してデンタルエックス線写真を撮影したところ,根尖病変も存在するが,瘻孔の原因は側枝の感染と思われた.側枝を狙って根管治療を行うことは一般的に困難であるため,通常の根管治療で治癒しない場合は外科処置を行う.1.再根管治療に至る原因とその治療の難しさ

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