ザ・クインテッセンス 2024年7月号
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54the Quintessence. Vol.43 No.7/2024—1394 「欠損歯列」は喪失した歯の位置(歯種)や本数,それに引き続く咬合関係によってさまざまな状態を示し,機能障害や審美障害を引き起こす.患者は欠損歯列に起因する問題について歯科医院に来院するが,残存歯や欠損部の状態,咬合関係(対向関係)といった条件を熟慮せず,文字どおり欠損部に歯の形態を付与するだけでは機能の回復が困難な症例も多く存在する.この一因となりうるものが残存歯の配置も含めた咬合力のコントロールであり,臼歯部咬合の喪失やすれ違い咬合などがその例として挙げられる. 本稿では,欠損歯列に生じる「アンテリアハイパーファンクション」について解説し,その実態や臨床的対応について検証してみたい. 「アンテリアハイパーファンクション」という本稿のキーワードについて耳にしたことがない先生方もそれなりにいらっしゃるのでは,と想像する.和訳すると,「前方部の機能亢進」となるが,用語の定義について調べてみると,(公社)日本補綴歯科学会が編集,発刊している『歯科補綴学専門用語集』第6版にはこの用語は記載されていない.しかし,「アンテリアハイパーファンクションシンドローム」という用語は「コンビネーションシンドローム」の同義語として記載されている1.また,米国のThe Academy of Prosthodonticsが刊行している『The Glossary of Prosthodontic』第9版(GPT-9)でも同様にアンテリアハイパーファンクションという用語はなく,コンビネーションシンドロームの同義語としてアンテリアハイパーファンクションシンドロームが記載されている2.そこで,まずコンビネーYoichiro Oginoキーワード:アンテリアハイパーファンクション,臼歯部咬合支持,咬合高径荻野洋一郎九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座クラウンブリッジ補綴学分野連絡先:〒812‐8582 福岡県福岡市東区馬出3‐1‐1Anterior Hyperfunction:Characteristic Features and Clinical Managementはじめにアンテリアハイパーファンクションとは何か?1特 集 2アンテリアハイパーファンクション:その実態と臨床的対応

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