the Quintessence. Vol.43 No.7/2024—142383リットマウスデザインによる研究である. 彼らは露出根面上にβ-TCPをレイヤリングし,FGF-2を塗布する群と塗布しない群に分け,根面被覆量や新生骨量,新生セメント質量を組織学的に調査した.その結果,FGF-2を用いた群が有意に新生骨量と新生セメント質量が多かったと報告している.なお,根面被覆量に関しては両群間に有意差はなく,ともに良好な結果を得ていた. 2017年にはChaら5が,根面被覆術にブタコラーゲン製剤とFGF-2を併用する研究を,イヌを用いたスプリットマウスデザインで行っている.その結果,ブタコラーゲン製剤とFGF-2を併用する群では,使用しない群と比べて,組織学的に新生セメント質と新生骨の長さが有意に増加したことを報告している.また,Ishiiらの報告4と同様に,本研究においても両群の根面被覆量に有意差はなく,ともに良好な結果が得られたという. Addinら6は,同じくイヌを用いたスプリットマウス研究にて,「β-TCPとゼラチン」と「β-TCPとゼラチン+FGF-2」の比較を行ったところ,FGF-2を併用した群は,コントロール群と比較して上皮のダウングロースの抑制,新生セメント質量の増加,新生骨量の増加が有意に認められたことを報告している. さらに,2020年のTavelliら7のレビューにおいて,根面被覆術にFGF-2を併用することの有効性が動物実験にて示されており,今後はヒトへの臨床応用の研究が期待されることも提示されている.2)臨床例 では,ここからはリグロスを用いた根面被覆術の症例をみていこう. CTGとリグロスの併用療法は,リグロスの有する血管新生促進作用8,細胞増殖促進作用9,細胞遊走促進作用10が根面被覆の際の移植片の生着や増殖に有効にはたらくことを期待するテクニックであることはいうまでもない.しかしながら,症例を選んで実施することが非常に大切となる.本稿の臨床例を通して,リグロス使用の有無による結果の違いを感じていただけると思う. 最初に,リグロスを使用していない症例を参考症例として供覧する.① リグロスは根面被覆術において強力なサポーター的存在である.② 術後の歯肉の審美性の観点から,リグロスを使用する症例の選択は重要である.③ 根面被覆術には,さまざまな術式があり,症例に応じて使い分ける必要がある.それぞれの術式の特徴,利点,欠点を知り,適したものを選択することが大切ではあるが,何よりも,切開,縫合などの手術の基本術式を習得することがもっとも重要である.読者に伝えたいこと
元のページ ../index.html#6