the Quintessence. Vol.43 No.7/2024—14421)PEEKとはどのような材料か?Yuya Komagata, Kosuke Akama, Shinya Kaku, Masamichi Hiura, Shinji Yoshii, Hiroshi Ikedaキーワード:PEEK,審美性,接着性,研磨性PEEK Crown for Molar Restoration102駒形裕也*,*1/赤間廣輔*,*2/加来伸哉*,*3/日浦正道*4/吉居慎二*5/池田 弘**九州歯科大学生体材料学分野,*1氷川台たんぽぽ歯科クリニック,*2あかま歯科クリニック,*3加来ひろし歯科医院,*4ひうら歯科クリニック,*5九州歯科大学ラーニングデザイン教育推進分野代表連絡先:*〒803‐8580 福岡県北九州市小倉北区真鶴2‐6‐1 近年,金属価格の高騰やメタルフリー治療の需要の拡大により,金属代替材料への関心が世界的に高まっている.この背景から,本邦では保険診療において2014年にCAD/CAM冠*1が導入され,その適用範囲は年々広がっている.しかし,大臼歯へのCAD/CAM冠の適用には限界があり,治療選択肢が金属材料に限られる状況も少なくなかった. そのなかで,2023年11月22日に開催された中央社会保険医療協議会の総会で,CAD/CAM冠材料の新たな機能区分“CAD/CAM冠用材料(V)”が設けられた(表1).これにより,PEEK製のブロックを用いた大臼歯の歯冠修復が同年12月から保険適用となり,保険診療における大臼歯の治療選択肢に金属材料以外もつねに選択できるようになった.しかし,PEEKという材料に不慣れな歯科医師も多く,その臨床応用に迷うことがあると思われる. そこで本稿では,PEEKを使用した大臼歯クラウン(PEEK冠)*2の補綴治療を成功させるために必要な基礎知識,臨床上のポイントを紹介する.*1CAD/CAM冠:従来のCAD/CAM用コンポジットレジンを使用したクラウン.*2PEEK冠:PEEKを使用したクラウン. PEEKとはポリエーテルエーテルケトン(Poly Ether Ether Ketone)の略称であり,高性能ポリアリールエーテルケトン(PAEK)ファミリーに属するスーパーエンジニアリングプラスチックの一種である(図1).耐熱性,耐薬品性,機械的性質に優れており,自動車産業,航空宇宙産業,医療産業など多岐にわたる分野で利用されている.とくに医療産業においては,人工関節や内部固定具,椎間板などの医療器具に用いられることが多い.はじめにPEEKの概要PEEKを使用した大臼歯クラウン保険適用となったPEEK冠の基礎知識と臨床上のポイント
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