ザ・クインテッセンス 2024年6月号
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XiLip Sealナソロジカル咬合平面設定した咬合平面を生体がどこまで許容できるのか,といった疑問がつねに付きまといます. 1つとして同じものがない生体の咬合平面を考慮する際には,単一の平均的基準に加えて,顎顔面骨格における咬合平面と下顎位の関係性に関する原理,原則が必要になります.この原理,原則を理解することが,多様なバリエーションをもつ個体への対応を最終的に可能にしてくれると筆者は考えています. 歯科医療で扱う咀嚼器官は,咀嚼,嚥下,呼吸,発音,頭蓋の姿勢維持,審美,ストレス管理など,ヒトが生存するために必要な基本的な機能を果たす多機能性の器官です.咀嚼器官がこれらの生理的な機能を遂行するためには,適切な下顎位への再構成が最大の目標であり,それには咬合平面,咬合高径の適切な設定が不可欠となります. 本稿では,フェイシャルタイプと咬合平面,咬合高径,下顎位の関係性について,顎顔面頭蓋の発育原理を踏まえて解説します.また,臨床例として,不正咬合の全顎的矯正歯科治療における咬合平面の診断,治療目標などを紹介します.この“咬合平面の設定”が,明日からの日常臨床に役立つヒントとなれば幸いです.(Gnathological Occlusal (Mandibular Plane)口蓋平面(Palatal Plane)ナソロジカル咬合平面下顎下縁平面Plane)図1 下顎中切歯の切端と下顎第一大臼歯の遠心頬側咬頭を結ぶ平面.平均的にはLip SealとXiポイントを通り,口蓋平面と下顎下縁平面のほぼ中間を通る直線となる.1)咬合平面 咬合平面とは,歯の排列によって決定される仮想平面で,一般的に下顎中切歯の切縁と左右側第二大臼歯遠心頬側咬頭を含む面で,Gysiの定義したカンペル平面とほぼ平行になるとされています1.総義歯では,カンペル平面を基準に,咬合平面を設定することが一般的です.その他,咬合平面の基準となる平面として,フランクフルト平面,アキシスオルビタル平面があります. 咬合平面は,厳密には上下顎歯列の咬合接触点(セントリックストップ)の連なった面で,実際には面を形成することはなく,複雑な湾曲となっています.しかし,診断的評価あるいは治療計画を立案するにあたっては,便宜的に仮想の面あるいは線として表現しています.2)ナソロジカル咬合平面 ナソロジカル咬合平面(Gnathological Occlusal Plane:GOP,図1)は,下顎中切歯の切端と下顎第一大臼歯の遠心頬側咬頭を結ぶ平面として定義さthe Quintessence. Vol.43 No.6/2024—1139291.咬合平面とは

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