ザ・クインテッセンス 2024年6月号
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ROS高血糖によって活性酸素種(ROS)が増加現在のエビデンス・歯周炎が発症しやすい・歯周炎が悪化しやすい・歯周治療で治りにくい可能性がある・従来の歯周治療よりも治りやすいアプローチは?・歯周基本治療で改善できない重度歯周炎への対応は?糖尿病の病態を踏まえた歯周治療のアプローチとは? 歯周治療の成績は,治療法や使用材料だけで決まるわけではありません.治すべき歯周組織の回復力図1 糖尿病に罹患した歯周炎患者では,高血糖による酸化ストレスなどによって炎症の増悪が起きている.そのため,歯周炎が進行しやすく治りにくい.その影響をしっかりと考慮して歯周治療を進めるべきである.ROSthe Quintessence. Vol.43 No.6/2024—1167を,いかに引き出せるかにかかっています.歯周治療では,プラークや歯石などの原因がきちんと除去できれば組織の回復が進み,良好な治りが期待できます. 糖尿病がある状態の歯周組織はどうでしょうか.前編で整理したように,歯周組織は高血糖による酸化ストレスや,それによって引き起こされるさまざまな細胞レベルでのトラブルによってダメージを受けています.この状態で,より回復しやすいアプローチを考えます. たとえば,仕事で落ち込んでいる職場の同僚が,以前のように元気に働いてくれることをあなたが望んでいるとします.そのようなとき,まずは同僚から話を聞いて寄り添う気持ちを伝え,相談にのることでストレスを和らげようとするでしょう. 次に,悩みの原因になっている問題が解決できないかに努めるでしょう.そして仕事の内容が軽いものになるよう心配りをして回復を待つはずです.さらに回復が得られた後は,まめに声をかけるなど,気遣うようフォローをして同じことが起きないように見守っていくのではないでしょうか.57はじめに歯周炎2型糖尿病1)糖尿病というリスクファクター 連載の前編では,糖尿病という“歯周治療への逆風”が吹いている状況を,高血糖やインスリン抵抗性という視点で整理しました. では,私たち歯科臨床家がどのような手を打っていけば,歯周治療がうまく進められるのでしょうか.通常の歯周治療と同じことをしても,その“逆風”のなかでは,必ずしも同じ成果が期待できるわけではありません.しかし,たとえ困難な状況ではあっても“敵(糖尿病)を知り,己(最新の歯周治療オプション)を知れば百戦危うからず”なはずです. 本稿では,糖尿病の病態を踏まえたうえでの有用な治療アプローチの選択を考えていきます(図1).2)ダメージを受けた歯周組織に寄り添う“やさしい”治療

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