ザ・クインテッセンス 2024年6月号
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a図2a,b レジンコアを除去したところ,歯冠部の歯質はある程度残存していたため,このまま治療可能と判断した.図1a図1b図1c図1a~c ₁はジルコニアクラウン,₁は口蓋側からコンポジットレジンが充填されてあった(a).デンタルエックス線写真では根尖に問題はなかった(b).ドナー歯として₈の抜歯を行った(c).b図2c コンポジットレジンを積層し,補綴治療までの暫間修復とした. 現症としては,₁₁とも局所症状はなく,₁は歯冠部口蓋側にコンポジットレジンが充填され,₁は歯冠部にジルコニアクラウンが装着されていた(図1a).歯肉に異常は認められなかった.デンタルエックス線写真にて根尖部に異常は認められなかった(図1b).既根管治療歯(正常根尖歯周組織)と診断した.(1)不用歯の抜歯 根管治療に先立って歯髄幹細胞の培養のため,伝達麻酔施行後,₈の抜歯を行った.抜歯後,専用容器にてアエラスバイオ社へ発送し培養を委託した(図1c).(2)事前治療・1回目 まず,₁のクラウンの除去を行い,装着してあったファイバーコア,残存歯質の確認を行った.ファイバーコアを除去したところ,歯冠1/2程度の歯質を認めたためこのまま治療可能と判断した(図2a,b).根管治療開始にあたり,移植時からの経過観察も含め約6か月以上暫間修復の状態となり,脱離および漏洩が懸念されるため,本症例ではコンポジットレジンにて直接積層充填して暫間修復とした(図2c).その後,ラバーダム防湿下で口蓋側からアクセスし再根管治療を開始した. ₁に対しては,口蓋側からレジン修復物を除去後,根管治療を開始した.ピーソーリーマー,超音波器具,ガッタパーチャリムーバーなどを用いて,顕微鏡下で根管壁の根管充填材(剤)を完全に取り除いた(図3a,b). 根管壁に根管充填材などの異物が残存すると,微生物やエンドトキシン,起炎物質の残存につながり,根尖部歯周組織への感染や炎症を引き起こす可能性がある.また,根管壁の異物は,細胞移植後に根尖孔外から遊走してきた細胞が根管壁へ付着し,象牙芽細胞へ分化して根管壁に象牙質を形成することを妨げる.よって,歯髄再生治療に対して悪影響を与える可能性があるため,根管内の異物を完全に除去することはとくに注意すべき重要事項となる. 根管拡大は,Kファイル(ボイテルロック)♯60(APEX−0.5)まで行った.the Quintessence. Vol.43 No.6/2024—119787症例1(田中症例1)

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