連載第3回目となる本稿では,“高齢期”の歯周治療について考えていく.令和4年歯科疾患実態調査によれば,高齢期における4mm以上の歯周ポケットを有する者の割合は,過去の調査と比較して高くなっている(図1)1. また,20本以上の歯を有する者の割合の推移も併せて考えると,高齢者における歯の保存は年々奏功しているが,その残存歯は歯周炎に罹患している割合が高いことが考えられる(図2)1. 第2回でも解説したように,重度歯周炎の有病率と罹患率がもっとも高いのは中年期であるため,中年期での適切な治療介入が望まれるところではあるが,その問題を高齢期に持ち越しているのが実情といえる. 高齢期のライフスタイルは多様性があり,まだ現役で働いている方,仕事や子育てが一段落してあらためて自身のことに時間をとれるようになった方など,さまざまである.口腔内の状況は,歯周炎の進行に加え,これまでの歯科治療によって失活歯,補綴歯,欠損歯が増えてくる.この時期の歯科治療は,歯周炎の進行を抑えるとともに,その後の老年期・フレイル期に備え,最終的な歯列,補綴設計を見据える必要があり,さまざまな歯周治療のオプション,欠損補綴のバリエーションを考慮した治療計画を立案する必要がある. 本稿においてもそれらの点をふまえ,それぞれの症例,関連文献について解説していく.(%)1009080706050403020100(歳)図1 歯周ポケット(4mm以上)を有する者の割合の年次推移(年齢階級別).参考文献1より引用・改変.75~50~54■平成17年 ■平成23年 ■平成28年 ■令和4年55~5960~6470~7465~69関根 聡(%)70605040302010015~2425~3435~44the Quintessence. Vol.43 No.8/2024—1643■平成17年 ■平成23年 ■平成28年 ■令和4年65~7455~6445~54(歳)図2 20本以上の歯を有する者の割合の年次推移.参考文献1より引用・改変.80~8475~7985~65 2症例ともに口腔機能回復治療を必要とする広汎型慢性歯周炎ステージⅣグレードCの患者であるが,最終補綴形態は固定性と可撤性で対照的である.治療計画の立案からどのようなことを考慮し現状に至ったのかを掘り下げ,また今後のライフステージに向けての注意点などを考察していく. 歯周治療における外傷性咬合力を除去するタイミングと動揺歯に対する長期的な固定の必要性,またインプラント治療を確実に行うための水平的なGBRの骨幅獲得量について文献を紹介していく.はじめに2つの症例報告(66ページ~)高齢期の歯周病に関するQ&A(76ページ) 高齢期の患者に対する歯周治療で留意されている点,SPTを行ううえで気をつけている点,補綴装置について配慮している点,の3点について具体的に回答していく.石川知弘先生による特別寄稿(77ページ~) 多様性が特徴的な高齢期において,局所的,全顎的な補綴対応,歯周組織再生療法の効果,インプラント治療の役割について症例を通して解説していただく.歯周治療およびインプラント治療のスペシャリストである石川先生のリカバリー方法,メインテナンスの長期経過は必見.LiteratureReviewContents本稿に掲載する4つのコンテンツ!
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