ザ・クインテッセンス 2024年8月号
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the Quintessence. Vol.43 No.8/2024—1670宮地栄介Management of Gingival Recession Associated with Orthodontic Treatment92大阪府開業 宮地歯科医院連絡先:〒569‐1116 大阪府高槻市白梅町4‐13‐4FEisuke Miyajiキーワード:矯正歯科治療,歯肉退縮,根面被覆術 現在,マウスピースを用いた矯正歯科治療が行われることや,新型コロナウイルスの影響により日常においてマスクを使用する頻度が増えたことで,若年者のみならず成人の矯正歯科治療も増えているように思える.年齢が上がれば上がるほど骨のリモデリングも遅くなり,矯正歯科治療において歯列弓を拡大することで,歯が骨のハウジングより出てしまうと,歯肉退縮が起こりやすい環境になることがある.歯肉退縮のあるブラッシング状態の良い患者において長期フォローした結果,高い確率で歯肉退縮が進行するとの報告があり1,歯肉退縮は放置すればよいというわけではない.よって,必要に応じて歯肉退縮を改善するために外科処置である根面被覆術が行われることがあるが,歯肉退縮が大きいほど根面を被覆することが難しくなる. そこで本稿では,矯正歯科治療後に大きく進行した歯肉退縮の改善に努めた症例と,矯正歯科治療前の患者の歯肉退縮に対して進行のリスクを予測し,必要に応じて術前に結合組織移植をともなう根面被覆術を行うことで歯肉退縮の改善に取り組んだ症例を提示し,矯正歯科治療にともなう歯肉退縮のマネージメントについて考察したい. 歯肉退縮に対して,まずは原因を把握し,それらを解決し,そのうえで将来を見据えて改善の必要がある場合に外科処置である根面被覆術を検討する必要がある. 根面被覆術を行う際は,Maynardの分類2を用いて今後の歯肉退縮のリスクの予測し,Millerの分類3やCairoの分類4を参考に根面被覆術の適応症なのかを判断する.適応症である場合,その難易度を予測したうえでアプローチすることが大切であると筆者は考えている(図1). Millerの分類のClass1,2において完全に根面被覆できる可能性は100%とされているが,Class3はArocaら5によるとは38%であり,Class4は根面被はじめに歯肉退縮の分類と根面被覆の難易度矯正歯科治療にともなう歯肉退縮のマネージメント

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