石井彰夫岡山県開業 石井歯科・矯正歯科クリニック連絡先:〒703‐8275 岡山県岡山市中区門田屋敷2‐2‐10Analyzing the Quintessence of Forces Associated with Mandibular Movements for Comprehensive Clinical DentistryPart2. Quantitative Assessment of Risk Factors of the Force using ME Equipment84Akio Ishiiキーワード:咬合力,咬合接触域,咬合接触圧,筋電図,筋電計 本稿前編(8月号)では,日々行われる下顎運動により歯に力が加わると,変位や咬耗・摩耗による形態変化を起こすが,3つの生理的代償作用によって,機能障害が起きないようにする生物学的な機構がヒトには備えられていることを示した.そして“力の問題”の本質を読み解くには,アナログ的な臨床所見による歯や歯列の形態分析では推測の診断の域を出ないことや,基本的下顎運動よりも機能運動時や非機能運動時といった動的な下顎運動の可視化による評価や検証が重要であることも述べた. 後編ではまず,顎口腔系へ作用する力のリスクファクターを可視化できる各種ME機器の特徴を述べる.そして,それらの活用により力の問題を具現化し,包括臨床に生かした症例を提示する.臨床家だけでなく患者にとっても“見える化”された力の検査結果には納得感があり,信頼関係の構築や円滑な診療の一助となると筆者は考えている. 歯科領域で行える可視化可能な咬合検査は,いくつかある(図1).日常臨床でもっとも行われている咬合紙法は咬合の静的状態の検査法であるため,材料の違いや当該部位の湿潤状況,反復での使用によって印記状態が変化するといった欠点がある.咬合の動的な状態を検査するためには,咬みしめ強度の違いによる接触位置の変化や接触力,接触時間といった他の因子についても評価する必要がある. 本項では,顎口腔系へ作用する力に対して主に動的な状態を観察できる臨床検査として行っている当クリニックで使用しているME機器について提示する.力という目に見えにくいファクターを可視化および数値化して日常臨床に使用することは非常に有益であると考えている.the Quintessence. Vol.43 No.9/2024—1908特 集 4後編ME機器を利用した力のリスクファクターの定量的評価はじめに1.“力の問題”を可視化・数値化できるME機器“力の問題”の本質を読み解き,包括臨床に生かす
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