ザ・クインテッセンス 2024年10月号
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今井 遊福岡県開業 友デンタルクリニック連絡先:〒819‐0367 福岡県福岡市西区西都2‐1‐11‐1FTips of Anatomical Diagnosis and Technique Using Orthodontic Anchor Screws (TADs)Yu Imaiキーワード:TADs,TADsの植立部位,解剖学的診断 近年,アライナー矯正歯科治療の普及により,多くの歯科医院で矯正歯科治療が行われるようになっている.そのなかで,歯列矯正用アンカースクリューを用いた一時的な固定装置(temporary anchorage devices;TADs)は,固定源を必要とする矯正歯科治療の構成要素の一部として,症例報告においても多く目にするようになった1. TADsは最大限の固定源として,歯および歯列の垂直方向,矢状方向の矯正的コントロール,上顎歯列の拡張,正中の改善などの管理に使用されており2,3,従来の方法(顎外固定)と比較して,TADsの高い汎用性,快適性,そして取り扱いの容易さにより使用が増加した4.矯正歯科治療の成功率についても,短期および長期の治療ともに従来の方法と比較して良い結果が報告されている5.その一方で,歯根接触に起因したTADsの喪失や,歯髄および歯根膜の損傷などのリスクが報告されており,TADs植立にともなう併発症を防ぐためには,正確な位置に植立することが不可欠である. 本稿では,歯槽骨および顎骨におけるTADs植立部位ごとの考慮すべき解剖学的構造(図1)を解説し,より安全で正確に矯正歯科治療における固定源を得る方法について実際の症例を基に示したい.50the Quintessence. Vol.43 No.10/2024—2116安全,正確な植立のための1)矯正歯科治療におけるTADs使用の目的 TADsは,矯正歯科治療における歯の移動の固定特 集 2はじめに1.TADsの目的と種類TADs解剖学的診断と手技のポイント

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