山﨑:私はこれまで補綴臨床家として、審美歯科治療だけでなく全顎的治療も含めたさまざまな治療を行ってきました。しかし、お恥ずかしい話ですが、歯と口の健康が全身の健康と関連していることが明らかになるなかで、これまで歯や歯列単位でしか患者さんを診ていませんでした。今回のテーマである睡眠時無呼吸症群で困っている方が私の患者さんの中にもいたことから、歯科としてできることはないかと考え、この分野に興味・関心を抱くようになりました。 また、今から数年前に米国の学会に参加した際、医師と歯科医師が同じ立場で閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)について熱くディスカッションしている姿を見て、衝撃を受けたことを覚えています。今後日本でも顕在化することが予想される睡眠時無呼吸症への対応は、歯科として急務だと思ったわけです。 日本ではまだ十分とはいえませんが、最近では睡眠時無呼吸症候群の早期発見・治療のために医科歯科連携の重要性が発信されたり、業界誌でも睡眠時無呼吸症の特集が組まれたり、少しずつ対応する歯科医師が増えてきていることは喜ばしいですね。尾島:私が気道を診るきっかけは、つい最近になって睡眠時無呼吸症で困っている友人が実際に身近にいたことや、それが主訴で来院した患者さんがいたことですね。また山﨑先生をはじめ、当院で外科担当としてサポートしていただいている菅原準二先生(宮城県開業)から睡眠時無呼吸症についてご指導いただくようになってから、気道を診ることを意識するようになりました。先日、ヨーロッパの学会に参加した際も、演者の1人が気道について言及していて海外でも1つのトピックになっていることもあり、現在では気道ばかり目がいくようになりましたね。12QUINT ORAL INFORMATION歯科から早期発見できる睡眠時無呼吸症群“気づき”を与え、健康につなげるクイント・オーラル・インフォメーション山﨑長郎Masao Yamazaki東京都開業/日本臨床歯科学会理事長 近年、医科と歯科の連携が注目されているなか、定期的なメインテナンスをとおして患者さんの口腔だけでなく全身の健康をチェックできる歯科の果たすべき役割は大きいと思われます。社会問題となっている睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、すでに困っている患者さんは約200万人といわれ、潜在患者は約500万人といわれています。早期発見・治療が求められていわれているなかで、重症化予防に寄与できる歯科の対応について考える必要があります。 本欄では、補綴臨床家の立場から山﨑長郎先生と矯正歯科医の立場から尾島賢治先生(ともに東京都開業)に、歯科における睡眠時無呼吸症へのアプローチについてお話をうかがいました(編集部)。睡眠時無呼吸症について山﨑:睡眠時無呼吸症の治療は、医科の標準治療であるCPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続陽圧呼吸療法)があり、AHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)5以上で睡眠時無呼吸症とみなされますが、20未満では保険適応にならず、保険適用外となります。 歯科的な対応として、医科からの紹介状や検査結果など診療情報提供があって、AHI 5以上で保険適用となるオーラルアプライアンス(OA)の製作が可能となります。CPAP療法の代替案としてOA治療は有効ですが、歯科で対応されている現状として保険適用はわずかで、ほとんどは自費診療での対応でしょう。また、どちらかというと軽度な患者さんかと思います。 歯科では睡眠時無呼吸症の確定診断はできませんので、そのような患者さんの対応はとても難しいと思いますが、顕在化させるきっかけの1つの方法として、冒頭に質問いただきました気道を診ることをオススメします。歯科が積極的に介入することで潜在化してい気道解析ソフトウェア「SICATエアー」気道閉塞の可視化を実現Q1気道を診るきっかけについてQ2 歯科が対応できる歯科における睡眠時無呼吸症候群(SAS)を考える山﨑長郎尾島賢治
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