本座談会では、2022年7月30日(土)、31日(日)に横浜での開催が予定されている40周年記念大会と、本年4月18日よりリリースされた国民向けの広報活動について、日本臨床歯周病学会理事長の高井康博先生と40周年記念大会の大会長を務める清水宏康先生に語っていただいた。――日本臨床歯周病学会の40周年記念大会のメインテーマを、「歯周病のトータルマネージメント~40年間の革新と功績~」と設定された理由をお聞かせください清水: 40周年記念大会の開催にあたり、日本臨床歯周病学会は何のためにあるのかと考えました。その結果、われわれが追い求めているのは、臨床のための歯周病学だということに辿り着きました。来院する患者さんは、学問的な歯周病の治癒ではなく、「歯がなくなったから歯を入れたい」、「しみるから治してほしい」、「見た目を改善してほしい」と希望しており、この治療が臨床では求められているということです。 このような治療では、歯を残すだけでなく、残らなかった場合の欠損補綴も求められます。 また、歯周病治療では、外科の革新に目がいくことが多いですが、非外科治療や診断に関してもこの40年間でかなり変わりました。全身に関する知識が増え、歯周病学は著しく発展したのです。私どもの40年には、いろいろな発展や試み、そして発見がありました。それらを総括して、皆さまと共有できればと思います。高井:遺伝学的解明や細菌学的学問の発展で、歯周病の原因が明らかになってきています。40年前は歯周病は不治の病で、絶対治らないと認識されていました。しかし、今では国民にも歯周病は治る可能性があり、失った骨も再生する、という知識をもっているかたが多くなりました。これは、40年を経た大きい功績です。――今大会では新しい試みもあるようです。具体的に教えてください。清水:今回は会場を2つに分けました。外科治療と非外科治療です。外科治療は主に歯科医師が集まる会場で、非外科のほうは歯科衛生士も集まる会場です。しかし、会場を明確に歯科衛生士向けと歯科医師向けとで分けませんでした。 診断も含めた基礎的な部分は、非外科のセッションで歯科医師も歯科衛生士もともに講義を受けます。なぜなら、歯周病を治すという共通目標は歯科医師も歯科衛生士も変わらず、とくに非外科治療では歯科衛生士が非常に重要なパートを任されます。目指すゴールは一緒なので、共通の知識を得てほしいです。高井:チーム医療では、お互いがどんな仕事をしているかを把握できないと良い治療にはなりません。知っておくべき知識はどちら側にもあります。歯科医師も、歯科衛生士の仕事はどういうもので、何が大事かということを知らなければならないと思います。ともにセッションを受けてもらうのは、学会としては初めての試みです。――外科セッションの見どころを教えてください。清水:外科のパートは大きく3つに分けました。1つ目は重度歯周病に対する歯周組織再生療法がテーマです。歯周組織再生療法はわれわれの夢で、ずっと追い求めてきたものですが、材料や方法も変化しています。メインセッションではテクニックの変遷の話や、根分岐部病変の話をします。基調講演のPierpaolo Cortellini先生は歯周組織再生療法の歴史を作ってきた人ですから、今までの治療の変遷も含めて、最新の話がうかがえると思います。 2つ目は、歯周病で失った審美性の回復がテーマです。歯周病に対する治療技術は、さまざまな審美治療に応用されています。軟組織欠損をもう一度回復するというのは審美性にとって大事ですし、前歯部インプラントの審美性確保のために歯肉移植をするのも、歯周外科の移植技術が応用されて発展したものです。退縮した歯肉の位置関係2QUINT ORAL INFORMATION歯科医院の全員が同じゴールを目指すための試み患者のさまざまな要望に応えるための外科セッションクイント・オーラル・インフォメーション東京都開業・清水歯科クリニックGINZA大会長 清水宏康臨床のための歯周病学を追い求めた40年日本臨床歯周病学会が歩んできた、これまでの40年とこれからの展望
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