クイントオーラルインフォメーション2022
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()05有訴者率(※2)・通院者率※4※1:有訴者とは、世帯員(入院者を除く。)のうち、病気やけが等で自覚症状のある者をいう。※2:有訴者率とは、人口千人に対する有訴者数をいう。分母となる世帯人員数には入院者を含むが、分子となる有訴者数には、入院者は含まない。※3:通院者とは、世帯員(入院者除く。)のうち、病気やけがで病院や診療所に通院している者をいう。※4:通院者率とは、人口千人に対する通院者数をいう。分母となる世帯人員数には入院者を含むが、分子となる通院者には、入院者は含まない。(人/千人)歯が痛い(有訴者率)かみにくい(有訴者率)歯ぐきのはれ・出血(有訴者率)歯の病気による通院者率栄養不良咀嚼による脳への刺激低下咀嚼機能低下図3 口腔機能と認知機能低下の負のサイクル(文献1より一部改変)。不十分なブラッシング歯の喪失/咬合力低下口腔衛生状態不良歯周疾患荻野:ライフステージを意識した歯科医療戦略を考えるうえで、年代ごとの歯科とのかかわりかたが大事かと思います。特に、生涯における口腔衛生状態を見据えるうえで幼少期での介入が重要となります。その点、小学校低学年くらいの時期は、親御さんが仕上げ磨きをしているので手入れが行き届いている傾向にあります。また、矯正治療をしている子も多く見受けられることからも、親御さんの歯に対する関心が高くなってきていることがうかがえますね。とはいえ、中学校の歯科健診に行くと口腔内が汚れている子が多いです。親御さんの介入がなくなるまでに口腔ケアの習慣が身についているかが、今後の口腔環境を決めるポイントになります。 また、平成28年歯科疾患実態調査において8020達成者が50%を超えたことが報告されていますが、う蝕罹患歯は増えています。以前と比較して歯は残っていますが、そのぶん治療を必要とする歯が多くなり、歯周病などの歯科疾患が発生しやすい環境になっています。そして、全身疾患へとつながっていく負のサイクルが形成されてしまう現状は、われわれ歯科医師にとって好ましい状況ではありません。また歯科受診率は70歳前後をピークに低下してくることもわかっています(図2)。全身疾患で外出が困難になっているのか、歳だからとなかばあきらめているのかなど、他にもさまざまな要因があるかと思います。あわせて、口腔機能の低下が見受けられる患者さんが増えてくる年代でもあり、食べられないものが出てくるほか、口腔乾燥や嚥下障害が出てくるなど、食べることに対するトラブルも増えてきます。こういった背景からも、今後はこれまで以上に未病阻止のための口腔ケアが大切になってきます。荻野:私は、他大学の先生とともに歯科と認知症に関するシステマティックレビューに取り組んでいます。特に咀嚼をはじめとする口腔機能と認知症との関係性は興味深いと考えています(図3)1。近年、歯科医師はもちろん、歯科衛生士にも口腔内を清潔に保つケア「器質的口腔ケア」だけでなく「機能的口腔ケア」の実践が望まれています。また、認知機能の変化を見るという点では、定期的に通院している患者さんにどのような変化があるのかに注目したいですね。たとえば予約の時間に遅れる、予約を忘れる、服装の乱れや会話に加えて歯科医院では口腔状態、衛生状態の変化に注目するなどです(図4、5)1。そのためにも「歯科医院が認知症の早期発見に貢献できるのではないか」という視点をもっておきたいですね。受付荻野洋一郎おぎの・よういちろう九州大学大学院歯学研究院クラウンブリッジ補綴学分野准教授図2 歯科疾患に関する有訴者率と通院者率。通院者率は70歳から減少する(https://www.mhlw.go.jp/fi le/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000166451.pdfより改変)。図4 患者さんの変化に気づいて、早期アプローチの機会を逃がさない。図5 歯科受診の際に初期の認知症の発見が可能なため、コミュニケーションや口腔内の変化に注意し、客観的な目線で変化に注目してほしい。QUINT ORAL INFORMATIONクイント・オーラル・インフォメーション○歯の病気による通院者率は70歳から減少するが、「かみにくい」と自覚している者(有訴者率)は年齢とともに増加している。908070605040302010あれ?○○さん……受付歯科疾患に関する有訴者率と通院者率P R認知機能低下8020達成者が50%を超えるも新たな課題未病阻止への口腔ケア認知症のゲートキーパーとなりえる歯科医院の役割

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