acb6荻野:以前は「歯があれば認知症にならない」と考えられていましたが、歯を使って「食べる」ことが大事になってきます。「食べる」ことができるようになってくるとコミュニケーションも変わってきますし、義歯であっても「噛める」「食べる」ということが脳機能に影響を与えているように感じています(図6、7)。後期高齢者となっても口腔内環境を整えたことで、食事では食べたいものを食べ、テニスやゴルフ、スポーツジムに通い充実した生活を送っている方もいらっしゃいます。 訪問診療では、まだ課題が多く理想的な治療ができないのが現状としてありますが、摂食嚥下の過程で歯科が果たす役割はすごく大きいと思いますし、歯科の立場から患者さんのQOLの向上に貢献できるところは力になりたいですね。やはり歳をとっても食べることが楽しいことであってほしいです。図6a~c 79歳、女性。治療後から3年が経過。久しぶりに来院されたが、表情にあまり変化がなく、言葉も少ない。義歯の汚れも顕著であり、口腔内には義歯性潰瘍を認めるが、潰瘍に対する訴えもなく認知機能の低下が疑われる。義歯や口腔内の観察を行うことは重要である。図7a 91歳、女性。通院がかなわず、上顎全部床義歯の不適合(人工歯咬耗にともなう咬合不均一、維持・安定ともに不良)を認めた。こちらの問いかけにも反応が悪く、コミュニケーションはうまくとれない状態。図7d 上顎全部床義歯の装着後2週間。年末年始を挟んでの来院だったが、その間食事もできたために、明らかに表情やコミュニケーション能力に変化を認めた。図7b 義歯調整後2か月。以前より、食事はできるようになったとのことだったが、こちらの問いかけにはあまり反応を示さない。家族の希望により、新義歯を製作することとした。図7e 上顎全部床義歯装着後2年3か月。現在、94歳になられたが、食事も問題なくでき、こちらの問いかけにも穏やかに反応されている。図7c 上顎全部床義歯製作過程(咬合採得)。食事も以前よりできるようになり、こちらの問いかけに対しても反応が出てきた。図7f 3か月毎のリコールを行っている。来院時には、義歯のチェック、残存歯、舌も含めた粘膜の清掃を行う。QUINT ORAL INFORMATIONクイント・オーラル・インフォメーション歯科の立場から患者さんのQOLの向上に貢献する
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