クイントオーラルインフォメーション2022
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9QUINT ORAL INFORMATIONクイント・オーラル・インフォメーション東京都生まれ。1998年 昭和大学歯学部卒業、同年 昭和大学歯科病院矯正歯科入局。2007年 本郷さくら矯正歯科(東京都)開業。医療法人スマイルイノベーション理事長、日本アライナー矯正歯科研究会(JAAO)主宰。アライン・ファカルティ。アライナー矯正治療を2006年より始め、国際的にスピーカーを務めヨーロッパ矯正歯科学会、日本成人矯正歯科学会、米国矯正歯科学会など国内外における講演多数。主な書籍に『Principles and Biomechanics of Aligner Treatment』(共同編集)、『Aligner Orthodontics:Diagnostics, Biomechanics, Planning, and Treatment』(執筆協力、Quintessence Publishing)、『アライナー矯正治療 診断/治療計画/矯正治療/顎位整復治療』(執筆協力・翻訳、丸善プラネット)。季刊誌Journal of Aligner Orthodontics(JAO)Editorial Board、隔月刊誌Journal of Aligner Orthodontics(JAO)日本版Local Advisory Boardも務める。山﨑いつも思うんだけど、たとえばせっかくセラミックなどの最終補綴装置がきれいに入っていても、あとで周囲筋の伸縮や習癖なんかで中切歯間が開くことがあってね。この閉鎖をアライナーでできるっていうんだけど、セラミックだとアタッチメントが付きづらいでしょう。それはどういう技法を使ってるの?尾島セラミックプライマーをつけてからアタッチメントを接着するっていうことでできますし、あと歯の移動量によってはアタッチメントなしでコントロールするとか、アライナーにディンプルというくぼみをつくって移動させることもあります。症例によってさまざまなアプローチがあります。山﨑「別にアタッチメントがなくても、アライナーは結構きついから閉じちゃいますよ」と言われたことがあるけれど、やっぱりそうなんだ。尾島歯根のコントロールが必要な場合はアタッチメントが有効ですが、失活歯の場合は歯根を移動させるよりも歯冠補綴で仕上げるほうが、歯の移動にともなう歯根破折のリスクを下げることができます。矯正歯科治療を行うのであれば、移動量のさじ加減が必要ですね。山﨑なるほど。こういう部分でも尾島先生の功績は大きいよね。治療を重ねた歯列にさらに治療が必要となったとき、補綴治療をやるGP(一般歯科医)がいろんな前準備をしてから矯正歯科に送って、矯正歯科でも補綴のことをすでに考えてあってというプロトコールがうまくいっていないと、包括的歯科治療は精度が低くなるし、患者さんの不安や負担が大きくなる。今後も、こうしたさまざまな歯科治療の協力体制とプロトコールのアイデアが議論されたらと思います。アライナーを用いた矯正歯科治療なら、歯科治療全体への心理的ハードルが下がる尾島あと、当院の患者さんのうち、過去に矯正歯科治療を経験していらっしゃる方、特に2回以上矯正歯科治療を経験されている患者さんなんかは、もうマルチブラケットでやるのはちょっと、とおっしゃる方が少なくないですね。山﨑:米国でも2度目以降の矯正歯科治療の需要がとても高いというでしょう。どんな人も矯正歯科治療がいくら良好に終了したからといって、未来永劫そのままの位置にあるということはない。年月が経ってちょっと叢生が生じたなどというときには再治療をやったほうがいいし、そのときは治療への心理的ハードルが低いほうがいいよね。尾島ブラケットで苦労した経験のある患者さんからは、アライナーは楽だねって言っていただけます。山﨑そうだと思いますよ。私は前から言っているんだけど、アライナーはもう本当に患者フレンドリー。当院ではひとりも苦情が来ませんね。尾島特に、高齢者は包括的な歯科治療を考えるべき口腔内の状態が少なくないですよね。しかし患者さんの要望どおり補綴治療はするけれども、その前に矯正歯科治療も必要となると、患者さんはどうしても「えぇっ(めんどくさい、やりたくない)」って思うじゃないですか。そこでアライナー矯正歯科について説明をしてさしあげると、心理的なハードルはすごく下がってきますね。山﨑私のもつ印象からもそうだと思う。アライナーは簡便性があるし、マルチブラケットよりも快適さがあるでしょう。高齢者は特に、まじめに指示どおり10時間20時間と装着してくれるんじゃないかな。ブラケットだと起こる最初の痛みもないし。だから結構受け入れられやすいんじゃない。修復が施された歯をどのようにアライナーで動かすかP R高齢患者さんにおいては、臼歯部は補綴治療にて、前歯部はアライナーで咬合を回復する症例が増えています。尾島賢治 Kenji Ojima矯正×補綴治療の可能性

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