デンタルアドクロニクル 2021
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10歯科医院で考慮すべきリスクは、エアロゾル感染だけではない 新型コロナウイルス感染症(CO-VID-19)の感染経路として一般にも知られるようになったエアロゾル感染については、歯科治療の特性上、歯科医院では曝露の機会が多くなります。そのため、「COVID-19の感染リスクが高い職業」として、歯科衛生士や歯科助手といったコデンタルスタッフの感染リスクの高さを指摘する報道もなされました。 一方、コデンタルスタッフが隣り合わせているリスクはエアロゾル感染だけではないことを皆さまは認識されているでしょうか。院内感染を防ぐために行われているはずの器具の手洗い洗浄や生体毒性の強い消毒薬の使用は、実はコデンタルスタッフの健康を脅かす行為として挙げられます。 何のために歯科医院で感染対策を行うかを考えたとき、来院する患者さんを守るためであることはもちろんですが、それ以前に、診療室で臨床業務に臨むスタッフ、防疫室で汚染器材の処理を行うスタッフの健康・安全が守られるものでなくてはなりません。 今回は、現状への問題提起とその対策についてご紹介します。エアロゾル感染のリスク&マネジメント 歯科医院では、治療中に患者さんの口腔内から吐き出される飛沫だけではなく、ハンドピースやエアースケーラー、スリーウェイシリンジ、エアフローなどからのスプレーミストが唾液と混ざり合い、それが口腔内から放出される空気媒介性飛沫核と、つまり飛沫よりもさらに細かいエアロゾルにも注意しなくてはなりません。 しかしながら、マスクを外した患者さんとコデンタルスタッフの間で必要な間隔を確保することや、サージカルマスクやグローブ、フェイスガードなどの個人防護具(PPE)で適切に防御して患者さんごとに交換すること、PPEの着脱に十分な時間をかけ、かつ手指消毒を行うことは、歯科医院では現実的に難しい状況が多いのではないでしょうか? その結果、コデンタルスタッフはつねに感染のリスクと隣り合わせていると言わざるを得ません。 エアロゾル感染対策としては、まずは口腔内から拡散するエアロゾル量をいかに減少させるかが重要であり、そのためには十分な吸引能力や機構を備えたサクションシステムやユニバーサルカニューレ、サライバエジェクターを適切に使うことが不可欠です(図1)。そのうえで、なお拡散していくエアロゾルへの対策として、表面消毒やPPE着脱後の手指消毒などを適切に行うことが重要なのです。手洗い洗浄による飛散感染のリスク&マネジメント 汚染器材の洗浄について、日本の歯科医院ではいまだに手洗い洗浄(用手洗浄)が主流となっています。しかしながら、ブラシやスポンジによるブラッシングで汚染物質を除去する用手洗浄では感染リスクが高いため、院内感染対策に関するほとんどの書籍等で、洗浄時には医科に準じてPPEをすべて着用して完全防護しなければならないと強調されています。 この時点で現実的ではないとお気づきかもしれませんが、PPEで完全防護さえしていれば安全なのかというと、けっしてそうではありません。流水下でのブラッシング時の汚染物質の飛散によって、シンク周辺の作業環境が汚染されること、その汚染された環コデンタルスタッフを守るための院内感染対策について見直しましょうDr. Kentaroh Nakamura中村健太郎(なかむら・けんたろう)Shurenkai Dental Prosthodontics Institute院長インフェクションコントロールリサーチセンター センター長ドイツMELAG公式インストラクタードイツDürr Dental SE公式インストラクター巻頭特集1-3オールデンタルで迎え撃つwithコロナ時代

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