デンタルアドクロニクル 2022
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82022年 歯科医療における感染制御スタンダードDr. Katsuyuki Atsumi渥美克幸(あつみ・かつゆき)2002年、長崎大学歯学部卒業。2002年、医療法人社団歯友会 赤羽歯科勤務。2010年、デンタルクリニックK開設。長崎大学歯学部非常勤講師。JIADS常任講師(エンドコース・ペリオコース)。日本接着歯学会認定接着歯科治療専門医。日本顕微鏡歯科学会認定医。日本口腔機能水学会認定医。日本医療機器学会認定第2種滅菌技士。JAOS認定第一種歯科感染管理者。患者さんとスタッフ双方に感染対策を!――まず、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の流行は、先生の歯科医院にどのような変化をもたらしましたか?渥美:私の医院では、あまり大きな変化はありませんでした。というのも、幸いなことに感染対策のシステム自体はCOVID-19流行前からほぼ完成していたためです。しかし、COVID-19流行初期の何もわからない時期、ある程度理解が進んだ時期、そして現在で、新たに取り入れた点もあります。――新たに取り入れたもの/ことというのは何でしょうか?渥美:たとえば、アクリルパーテーションの導入、またゴーグルやマスク着用の徹底です。ガウンを着るという話もありましたが、当院では採用しませんでした。ガウンの着脱時の感染可能性や処理の問題について、どうすべきか明確な指針がなかったことが理由です。その分、基本に立ち返ってしっかり手を洗い、うがいをする。可能であれば顔を洗うということを継続して行いました。 また、スタッフの感染対策として、制服の数を増やしました。もともとは1日1枚でしたが、COVID-19流行以降は午前、午後で着替えるようにしています。グローブについてはもともと積極的な交換をしていましたので、その姿勢は流行以降も変わっていません。また、以前はスタッフで集まって昼食をとることが多かったのですが、現在は意図的に場所を分散するようにしています。 新たに導入した機器としては、業務用の空気清浄機(図1)があります。サーキュレーターを多数導入して空気を循環させると同時に、業務用空気清浄機で換気を補うようにしています。 また、備品在庫の管理が変わりました。2020年の夏前ごろがマスクやグローブといった備品不足のピークでしたが、その後購入できるようになったときに、買ったはいいけれども管理する場所がないということになり、在庫の管理ができるように棚を大量に増設しました。 患者さんへの対応としては、診療室に入る前に行っていただくことが増えましたね。まず来院したら必ず手を洗ってうがいをしていただきます。当院ではもともと診療室に入る前に血圧計で血圧を測ってもらっていましたので、これは継続しています。そして診療室に入る前にエタノールで手指消毒をしていただいて、診療室に入ったら体温を測定してスクリーニングしています。 なお、当院は、以前から感染対策を徹底しており、このことについて情報提供を行い続けてきました。実際に複数の患者さんから、「ここはもともときちんと感染対策をしているから安心だよ」「下手に家にいるより、ここに来たほうが安心かもね」ということを言っていただけたのは嬉しいことでした。どのような事態であれ、学ぶことを維持していく渥美:診療室以外の変化でいえば、2020年以降ウェビナーが増えたこともあり、空き部屋を改装してスタッフが安心してウェビナーに参加できる部屋を作りました(図2)。この部屋は換気装置を付け替えて、仮に10人程度で入っても問題ない環境を維持できるようにしてあります。 私はどのような事態であれ学習を維持することは重要だと考えています。もちろんこの部屋でウェビナーを発信できるようにもしています。今後も気を緩めず、そして手を緩めずに巻頭特集1-2

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