デンタルアドクロニクル 2022
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2022年 歯科医療における感染制御スタンダード  巻頭特集19 また、この部屋を作ったことで、スタッフと院長(私)が一緒にウェビナーを見て、その場で解説や意見交換をできるようになりました。もちろん実際のセミナーに参加する利点は数多くありますが、セミナー中にこういったコミュニケーションが取れることは、ウェビナーにしかない大きな利点ではないかと思います。口腔外サクションが大活躍!――COVID-19以降、とくに欠かせなくなった器具・機器はありますか?渥美:当院では、COVID-19流行以前から口腔外サクション(図3、東京技研)を設置していました。これは補綴処置にともなって発生する粉塵や、インスツルメントから発生するエアロゾルの吸引を目的とした製品です。 本当に幸運なことなのですが、CO-VID-19流行の直前に東京技研社と共同で本製品の使い方の検証をしていました。もしその機会がなく突然使うことになっていたら、どうすればいいかわからずに困っていたかもしれません。2019年秋の東京デンタルショーで、口腔外サクションの当院での使い方についてお話する機会をいただいたとき、ご参加いただいた方々の反応は、「今までこんな話は聞いたことがない」というものでしたが、その後半年も経たないうちにこのような事態になるとは誰も予想していませんでした。 機器内部の清掃など、今後さらに考察が必要な点もありますが、活用できそうな機器であればどう使っていくかをスタッフと話し合い、患者さんにも歯科医院にもプラスになるようにしていきたいと考えています。システムを無駄にせず、未来に活かす――COVID-19対策が始まってから、約2年が経ちます。この1年で、歯科界で変わったと感じられたことはありますか?渥美:COVID-19に対して過剰に反応していた部分が落ち着きましたよね。しかし、過剰な反応とは言っても、それは物事が過ぎてはじめて「過剰だった」と判断できるわけで、当時はどこまで対策をしたらいいのか誰にもわかりませんでした。そのような状況で、歯科医院それぞれの、また、医療従事者それぞれの考え方と責任において対処していたのが現実です。そして、振り返ったときに「そこまでしなくてもよかったんだ」ですんだのであれば、それはそれで良かったのだと思います。 本当に、何もわからないなかで対策しなくてはいけないというのがいちばん大変ですが、飛沫感染の場合は、一般の呼吸器感染症対策を参考にすることができます。また当院ではSARSやMARS、そして新型インフルエンザの対策・指針なども参考にしました。いろいろ大変なことはありましたが、今のところなんとかなっているので本当によかったです。――最後に、本稿をご覧の先生方へメッセージをお願いします。渥美:今回はCOVID-19の流行でしたが、いつかまた未知の病原体への対策を迫られるときがくるかもしれません。今回のことをきっかけに感染予防システムの見直しを行った診療所も多いと思いますが、今後も気を緩めず、手を緩めずに継続していっていただきたいです。そのためには、院長だけでなく、スタッフだけでもなく、全員がもう一度基本的なところから感染対策の確認をする必要があると考えています。(談)図1 当院で導入した業務用空気清浄機(コア・マイスター ホープ15H、コアテック)。家庭用と業務用では規格が異なるため、処理能力をふまえると後者のほうが適していると考える。図2 院内を改装してつくったセミナー室。スタッフのウェビナー視聴はこの部屋で行っている。12図3a~c 口腔外サクションの例(フリーアーム アルテオ F/T/S、東京技研)。当院ではcの単体移動型ではなく、aやbのセントラル方式を採用している。3abc

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