デンタルアドクロニクル 2022
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122022年 歯科医療における感染制御スタンダードDt. Shigeko Yamashita山下茂子(やました・しげこ)歯科技工士株式会社デンタル デジタル オペレーション 専務取締役帝塚山学院短期大学・新大阪歯科技工士専門学校 卒業日本歯科技工士会認定講師新大阪歯科技工士専門学校非常勤講師日本歯科技工士会 副会長 日本歯科技工学会 理事大阪府歯科技工士会 監事所属学会:日本歯科技工学会、日本デジタル歯科学会、日本医療管理学会はじめに:歯科技工所の感染対策とは 歯科技工士の就業状況は、「歯科医院等の院内技工室」と「歯科技工所」に大別できますが、院内歯科技工士、技工所勤務の歯科技工士とも感染リスクに差異はありません。歯科技工所勤務の歯科技工士は、感染対策についての意識をもち続けるために、スタッフ全員で感染対策についての研鑽を行い、認識を深めることが必要です。なお、近年、歯科技工所勤務の女性歯科技工士が増加傾向にあり、とくに妊娠や子育て中の女性歯科技工士が就業する職場では、各種感染症のリスクを回避するための十分な備えが必要です。職場での真摯な議論が必要 従来から、歯科技工の現場では、B・C型肝炎やHIV感染症などの感染防止を念頭に、印象体や模型に対する感染対策を行ってきたと思います。 一昨年来のCOVID-19のパンデミックは、「手指のアルコール消毒」、「マスク・ゴーグル・グローブの常用」、「ユニフォームを小まめに着替える」などの対策を不可欠なものにしており、この機会に感染対策全般を見直す必要があります。 また、感染対策については、絶えず新しい情報を入手する努力を怠ってはいけません。たとえば、COVID-19の感染経路は、当初、「飛沫感染」と「接触感染」とされてきましたが、その後、WHOやCDCは、これに加えて「エアロゾル感染」が重要な感染経路であるとしています。 今後、歯科技工の現場においては、「汚染を持ち込まない」、「汚染を持ち出さない」について、どのような対策を行えば良いかを、職場の仲間のため、家族のため、そして自分のために、スタッフ間での議論を高めていく必要があります。感染対策をルーティーンに!1)起床時の体温測定 起床時の測定は面倒ですが、自分の体調を把握するバロメーターになります。自身の平熱を知ることで、身体に異常が発生すればすぐに対処することが可能になり、大きく体調を崩すリスクを下げることができます。 もし、出勤前に37.5℃以上であれば、出勤を控えるとともに直ちに上司に報告して指示を仰ぎましょう。喉の痛み・咳・嫌悪感などがある場合も同様です。体調の異常を押して出社すると、職場全体に大きなダメージを与えることになります。2)出社時の体温測定と記録 出社したら、すみやかに手指消毒と体温測定を行い、計測値は記録表に記載しましょう。体温を何回も測定することは無意味とも思えますが、通勤途上で体調が悪化している可能性もあり、また他の従業員に安心感を与えるためにも必要です(図1)。3)アルコール手指消毒剤の活用 消毒液は、出入り口、作業机共有スペースなど、社内の要所に配置し、出入りごとの使用が必要です(図2)。汚染を拡散することがないように作業の節目ごとにアルコール手指消毒剤を適切に使用してください。アルコール手指消毒剤は衛生的手洗いと同等の感染予防効果があるうえに簡便であるという特長があります。歯科技工所/歯科技工士に必要な感染対策の再考を!―職場を守り、家族を守り、自分を守る―巻頭特集1-4

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