デンタルアドクロニクル 2022
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2022年 歯科医療における感染制御スタンダード  巻頭特集1134)衛生的手洗いの励行 正しい「衛生的手洗い」を行うことで手指に付着した通過細菌を除去します。手洗い後は、ペーパータオルを使用しましょう。なお、指輪や時計の周りに汚染が集中する可能性がありますので、手洗いの前に外す習慣をつけてください。5)作業前後に注意することは 作業前後には、自分の作業机や椅子、技工器具のみならず、スタッフで共用する作業器具・ドアノブ・電話機・PCのキーボードやマウス、共同スペースで使用する用具など、当番を決めてアルコール消毒液で拭きましょう。ちなみに2020年には、病院内で共用PCのキーボードからCOVID-19のクラスターが発生したという事例があります。 従来から歯科技工士は、技工作業に不可欠な防護用具としてマスク・ゴーグルを常用していると思われます。これらは、感染予防はもちろんのこと、粉塵や創傷防止という大切な役割があります。COVID-19の感染拡大が収束しても、使用は続けるべきです。 アクリルパーテーションなどは、飛沫感染対策として有効です。ただし、可燃性のものもありますので火気の近くや、作業を妨げる位置に設置しないよう注意してください(図3)。 換気は、1時間に2回を目安に行い、外気の取り込み効率をアップさせるように複数の扉や窓などを開放しましょう。特に、換気が不十分になりがちな冬季や夏季には注意が必要です。6)歯科医療機関に訪問の際には 営業担当者が歯科医療機関に訪問する際には、マスクはもちろんのこと、アルコール手指消毒剤を持参してください(図4)。また、歯科技工士がシェードテイクやデンチャーの試適に立ち会う際には、診療室に入る前に、マスク、グローブ、清潔な白衣、フェイスシールドを装着の上、その場で手指消毒を行ってください。 なお、歯科医院等との症例に関する打ち合わせは、メールやWebミーテイングシステムなどのデジタル技術を多用して、極力、訪問を避けることで双方の感染リスクの軽減が可能です。 採得した印象体や作業用模型には微生物汚染の可能性があるものとして取扱う必要があります。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、喉の粘膜からと同等のウイルス量が唾液からも検出されることがわかっています。印象採得から模型製作までの過程で、作業に関わるすべての人と情報共有を行い、感染対策を進めましょう。職場で感染者・濃厚接触者が発生したら COVID-19による深刻な事態は「従業員からの感染者または濃厚接触者の発生」であり、日頃から十分な備えが必要です。職場内消毒のための、消毒薬、スプレー容器、手袋、防護着、フェイスガードなどを常備することをお勧めします(図5)。 感染者等が発生した場合、職場内の汚染の拡大防止が何より最優先され、この成否がその後の業務の継続を左右します。 今後、「ウィズコロナ」と呼ばれる時期に入るのか、あるいは新たな感染の波が到来するのか、私たちは先の見えない不安感に苛まれつつ日常業務に従事しなければなりません。しかし、このような非常事態だからこそ、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士が一丸となり、歯科医療を守るために感染予防に取り組む必要があります。 私たち歯科技工士は、感染症対策というと難しいものと考えがちですが、身近な対策から少しずつ着手していくことが大切です。歯科技工士が医療人であるとの認識を新たに、歯科技工界の感染対策について議論を深めていきたいと思います。参考文献1. 奥田克爾,大西正和.歯科技工士のための感染知識と対策例(第3版).東京:日本歯科技工士会,2020.2. 大西正和.歯科技工領域での「新型コロナウイルス感染症」対策 ―自分を守る、職場を守る、そして歯科医療を守る―.日本歯技 2020;613:33-37.3. 大西正和.歯科技工領域での感染症の基礎知識と対策Q&A ―新型コロナウイルス感染症の第2波に備えて―.日本歯技 2020;615:33-39.図1 オフィスの入り口に、手指消毒液と体温計、記録簿を設置しておく。図2 手指消毒液は、オフィスの要所要所に設置しておく。図3 アクリルパーテーションなどは、飛沫感染対策として有効。図4 携帯用の手指消毒液を用意し、持ち歩くようにする。図5 職場内消毒のためのキットも準備しておく。

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