デンタルアドクロニクル 2022
26/188

24Quint Dental AD Chronicle 202235年間不変の開発コンセプトチェアサイドソリューション――草間先生は、歯科用CAD/CAMシステムのエキスパートとして国内はもとより、海外で活躍されています。なぜいち早くCERECシステムに着目されたのですか。草間:1985年当時、One Day Treatment(現在はOne Visit Treat-ment)が可能なCAD/CAMシステムは基本的にCERECだけでした。院内設置型の小型ミリングマシンからスタートしたCERECは、いわゆる効率性と正確性の両方を備え、他社システムはラボ仕様の歯科技工システムの延長線上から開発されたモデルスキャナーとミリングマシンがベースとなっています。 特筆すべき点は、CERECシステムのコンセプトが35年前から一貫して変わらないことです。 CAD/CAMシステムは、ややもすれば形を作ってセットすれば良いと思っている先生方もおられるかもしれませんが、そうではありません。CERECシステムの開発者のWerner Mörmann(ヴェルナール・メールマン)先生の開発コンセプトは、コンポジットレジン(以下、CR)充填を失敗させないようにすることでした。30年前のCRの材料は重合収縮率が7%前後もあり、収縮するときに、接着ができていればエナメル質を引っ張ってクラックができますし、接着が不良であればギャップが生じます。どちらにしても二次う蝕になりやすいので、Mörmann先生は窩洞内にセラミックインレーの塊を入れることにより、CRの量を少なくして総収縮量を低減させるというコンセプトを考えたわけです。 また、One Visit Treatmentというコンセプトも接着修復だからこその発想でした。たとえばリテンションのあるクラウンやブリッジのように被せてしまう補綴物は、接着についてさほど神経質にならないかもしれませんが、インレーやベニアなどの、接着により歯質と相互強化をするような修復物では、インターバルをあけて後日にセットすると、仮着用セメントや仮封材により接着面が汚染され結果として接着力が下がることが報告されています。また、形成した当日にセットできれば象牙質への細菌感染のリスクも低減されるので当然二次う蝕のリスクも低減するということになります。 One Visit TreatmentでCR充填を成功につなげるという開発コンセプトが今も変わっていないから使用していることは間違いないでしょうね。CERECエキスパートが語るCERECシステムの現在地――CERECの開発コンセプト自体が歯科医師目線だからこそ、35年の長い間臨床家の先生方に活用していただいているわけですね。CERECシステムの導入当初はさまざまなご苦労があったかと思います。当時を振り返ってみていかがでしょうか。草間:おそらく今でもそうですが、2019年に発売された口腔内スキャナー「Primescan」を導入しても何となくの状態で使用するとうまくいかないことはあると思います。もちろんCEREC1(1987年)、CEREC2草間幸夫 歯科用CAD/CAMシステム「CEREC」の誕生35周年を記念して、長年にわたってCERECを臨床応用され、現在では後進の育成にも尽力されているエキスパートの先生にお話をおうかがいしました。 本欄では、歯科臨床にいち早く導入した草間幸夫氏(東京都開業)に、CERECとともに歩んできた臨床の軌跡を振り返っていただきながら、CERECが歯科臨床にもたらした真価について解説していただきました。(編集部)CAD/CAMシステム「CEREC」35年の軌跡―その進化と深化を再考する―※本記事は「新聞クイント」2021年12月号より抜粋して掲載。

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る