31Dentsply Sirona × 佐々木英隆スの強度は300~500MPaで、ジルコニアの強度は700~1,000MPaです。今回の「テセラ」は、2軸引張強度が700MPa以上ということですので、強度的には今までのガラスセラミックのブロックとは一線を画していると思っています。 私たちがその強度を最初に実感するのは加工時です。高強度ガラスセラミックを加工する際、マージン部分のチッピングが生じることがよくあります。しかし、今回の「テセラ」はこの高い強度によってマージンチッピングのリスクが低減され、とてもシャープなマージン加工が可能です。またその高い強度ゆえ、リテンティブデザインの支台歯形成を行い、1.5mmの厚みをもたせられればセルフアドヒーシブセメントでの装着も可能です。その点は、ジルコニアに近い使用方法が可能なガラスセラミックといえるのではないでしょうか。――先生の臨床において、今後はどのような症例に対して「テセラ」を使用される予定でしょうか。佐々木:当院では、前歯部の治療が多いので「テセラ」の使用頻度としては、先ほど供覧したようなベニアの修復治療が多いと思いますが、今後は他の症例も増やしていければと考えています。またジルコニアほどの強度はありませんが700Mpaとそれに近い強度がありますので、歯肉縁下マージンのクラウンを製作する際に、操作の容易なセルフアドヒーシブセメントを使用して装着する、といった方法も非常に有用だと思っています。たとえば、私はこれまで歯肉縁下の深いマージンとなるクラウンでは確実な接着操作が困難なことからジルコニアを使用しセルフアドヒーシブセメントでの装着を行っていましたが、数例の歯根破折をともなう症例がありました。さまざまな原因はあると思うのですが、要因の1つとしてジルコニアクラウンの強度が高すぎる点が挙げられるのではないかと思っています。しかし「テセラ」は、セルフアドヒーシブセメントで装着できる強度ですがジルコニアには及びません。つまり歯にも優しく術者にも優しい治療ができるのではないかと期待しています。 もちろん、「テセラ」は、フルカバータイプのクラウン、インレーやオンレーにも安心して使用でき、また肉厚部が1.0mm程度でも強度が期待できるため、オールマイティな補綴修復物の設計ができるのではないでしょうか。――最後に、「テセラ」の導入を検討されている読者にメッセージをお願いいたします。佐々木:高強度ガラスセラミックを初めて使用する歯科医師にとっては、操作性も簡便ですので導入しやすいと思います。また「テセラ」が独自の技術を採用しているアドバンスド二ケイ酸リチウムブロックの二重結晶構造は、天然歯のような透明感とオパール効果を発揮するので、色調が合わせやすいですし、これまで前歯部の症例は歯科技工士に任せていた先生方も多いかと思いますが、ラボサイドでも非常に使いやすい製品だと思います。 あとは接着の問題ですね。ジルコニア修復物はしっかり接着できていないのではないかという不安があります。というのも最近、他院で装着されたジルコニアインレーを長石系のガラスセラミックスに交換した症例がいくつかありましたが、その際、バーで切り込み入れると意外と簡単に外れたので、しっかり接着されていなかったようです。一方、ガラスセラミックスの接着は、ガラスマトリクスのエッチング処理とシランカップリング処理を施せば、確実にしっかり歯牙と接着できることがわかっています。もちろん「テセラ」もそれらの処理を行うことで確実な接着を達成することができます。 繰り返しになりますが、「テセラ」はジルコニアに近い強度で、加えて透明感もあり、接着も確実で焼成時間も速いという使い勝手の良さがありがたいですね。「テセラ」の誕生によって、単冠修復の場合は、今後ジルコニアの使用頻度が低くなるという検証などができれば非常に興味深いと思います。――本日はありがとうございました。図8 接着直後。「テセラ」MT A1を使用。図9 「テセラ」の高い審美性が確認できる。※ CEREC Speed Fireにて、スピード マトリックス焼成した場合
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