37Dentsply Sirona × 三林栄吾 × 中嶋 亮基本から学ぶ機会がほとんどありません。その典型的な例が、アライナー矯正歯科治療です。透明なアライナー型矯正装置は、口腔内スキャナーがあれば一般開業医にも導入しやすい矯正装置ですが、治療目標が達成できていないなどの多くの諸問題が発生しています。デジタル化すればオートマチックに矯正歯科治療ができるわけではありません。診断を軽視した矯正治療は、患者さんを不幸にするだけでなく、矯正歯科治療の社会的信頼を失墜させる危険性すらでてくるでしょう。 したがって、術者である歯科医師のアライナー矯正治療に関する知識や技術を習得するプラットフォームとして、企業主導ではない教育機関や生涯研修の場が必要だと考えています。中嶋:デジタル矯正治療のシステムが複雑化・高度化になればなるほど、求められる矯正治療の技量も高くなります。SureSmileも同様で、このシステムを使いこなすには矯正治療の知識と技術、そして修練が必要とされます。デジタルの理想は「WYSIWYG(What You See Is What You Get)」といわれています。画面上で見たままが口腔内に治療結果として得られるようになるためには、高い技術と知識をもった矯正治療を専門とする先生方にこそ、ぜひ積極的にSureSmileを活用していただき、診断と治療計画の立案、治療結果の具現化を行っていただきたいですね。 また、一般歯科医(GP)の先生方には、今まで矯正歯科医の頭の中にあった治療計画や歯の移動のシミュレーションなど、ある意味ブラックボックスだった部分がSureSmileのようなデジタル矯正システムを使用することで、ある程度可視化されるようになります。矯正治療に取り組むためのステップとして良いツールになりうると思っています。患者さんに寄り添ったより良い矯正治療の提供へ――最後に、アライナー矯正がもたらす患者さんへの価値について、メッセージをお願いいたします。三林:アライナー矯正関連の業者のホームページの中には、あたかも簡単に矯正治療ができるように錯覚してしまいそうな内容が多々見受けられます。アライナー矯正は、矯正治療の1つのシステムですから、従来のワイヤー矯正と同様にきちんとした診断が必要です。SureSmileのように、術者の歯科医師の便利性の向上だけでなく、患者さん主体の矯正治療を可能とすることで満足度や信頼性の向上、すなわち、より価値の高い矯正治療が提供できるのではないでしょうか。中嶋:現在、SureSmileに類似したデジタル矯正システムが次々に開発されています。CBCTのDICOMデータとIOSによる口腔内のSTLデータを合成し、顎顔面モデルを作製することはそれほど珍しい手法ではありません。ところが、多くの場合は歯冠と顎骨は患者さんのものであったとしても、歯根のデータは擬似根だったりします。歯根形態は実はかなり複雑で、湾曲などの変形が認められることは多くあるのです。あるいは歯根が表示されても顎骨が表示されないシステムもあります。 また、そのようなデータを術者が三次元的に自由に移動させて治療計画を立案できるシステムとなるとさらに限られます。患者さんの頭蓋顔面データをできるかぎり正確に再現し、それに基づいた治療計画を術者が立案できて初めて今後のデジタル矯正支援システムの最低条件を満たすことができるのではないでしょうか。 さらにいえば、そこから実際に矯正装置の作製を行えるシステムかつ、患者さんの希望に応じてブラケットとアライナーの両方に対応できるシステムは、現時点ではSureSmileしかありません。 SureSmileは無機質な画面上の絵ではなく、患者さんそれぞれにカスタマイズされ、より患者さんに寄り添った矯正治療を提供するためのベストな選択肢となりえると思います。――本日はありがとうございました。
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