特別座談会 46「防ぎ・守る」「患者も主治医」がキーワード――まずは,アカデミアの立場から天野先生に,これからの予防歯科についてお話しいただければと思います.天野 昭和の予防歯科は「防ぐ」,すなわち発症を防ぐことでした.ところが,今の予防歯科は「防ぎ・守る」ことへと変わりました.一体何を守るのか? それは健康な口(=健口)です.健口を守ることで,全身の生活習慣病の発症を防ぎ,命を支えるという昔の予防歯科と,今そしてこれからの予防歯科 人生100年時代といわれる現在,あらゆる世代の患者さんが来院する歯科医院では,患者さん個々のリスクファクターを把握したうえで,一人ひとりの患者さんにあったオーダーメイドのアプローチが求められる.“予防歯科をすべての人に”がテーマである株式会社モリタが推進する「Cresmile」はあらゆるソリューションをもつ予防歯科システムとして期待されている.そこで本座談会では,大学教授,一般臨床医,矯正歯科医,歯科技工士,歯科衛生士のそれぞれの立場から,これからの予防歯科とその展望を語っていただいた(なお,本座談会は2021年12月14日にモリタ大阪本社にて収録され,若林先生にはZoomで参加いただいた).ことがはっきりしてきました.これからの歯科医療人の役目は,「防ぎ・守る」こと,これがこれからの予防歯科のキーワードになります. もうひとつのキーワードが「患者も主治医」です.歯科医院で疾患を治療するとともに,プロフェッショナルケアを行う.そこに適切なセルフケアが加わることで,防ぎ・守ることができるわけです.そのために,患者さんにう蝕と歯周病を自分事にしてもらう必要があります.しかし,患者さんに言葉だけで伝えようとしても,右から左にすぐ忘れてしまうため,画像として,もしくは数値化して「見せる」ことが重要です. これは学習塾と一緒です.患者さんに自分のお口の偏差値を知っていただくのです.そして,防ぎ・守るためには,どういうプログラムで,どんな勉強をしたらよいかを個別に理解してもらいます.最初に患者さんの客観的な口腔内検査をすることが,これからの「予防歯科の一丁目一番地」になります.その検査結果に基づいて,予防プログラムを立てていきます.欧米では当たり前のこのシステムを,ぜひ日本の歯科医院でも普及することを期待しています.――検査を実施するにあたって,どういったものを使うのがよいのでしょうか.天野 モリタ社が扱っているSMT(図1)では,唾液でう蝕や歯周病のリスクが簡便に判定できます.精密検査ではありませんが,自分の口の偏差値がどの程度なのかを理解していただいてモチベーションアップにつなげるのにとても便利です.SMTは,患者さんを主治医にするための大きな方策だと思います.図1 多項目・短時間唾液検査システム“Salivary Multi Test(SMT)”[販売者:ライオン歯科材(株)].天野敦雄大阪大学大学院歯学研究科予防歯科学教室教授歯科医師
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