特別座談会 「Cresmile」で予防歯科をすべての人にることが大切です.「あなたのお口は,むし歯菌が多そうです」「唾液の緩衝能が低いです」と画像や数値とともに見せると,「私はリスクが高いんだ」と患者さんに認識してもらうことができます. 検査データの数値化は,医科では血液検査などで当たり前ですが,歯科でもこれからは数値化していくことがとても大切であると思います.当院ではトリニティコアを中心に,院内LANでカウンセリングルーム,スタッフルームはもちろん,各チェアにあるiPadで,患者さんもスタッフも,いつでもどこでもデータを見ることができ,すごく便利です.予防歯科では,このシステムをしっかり導入し活用することが大切だと思います.天野 これは本当に大事な点です.昭和の歯科医院では,患者さんは「先生にお任せします」,歯医者は「任せてください」でした.お口の健康を維持するために,患者さんがきちんとセルフケアをしなければいけないことがあまり理解されていませんでした.その結果,削って,詰めて,被せて,抜いてという負の連鎖で口腔内はどんどん崩壊していったのです. 今後は,治療後にしっかりとケアしていただくこと,若林先生の医院のように患者さんに自分のことをよく知っていただくことが大事だと思います.う蝕や歯周病のリスクが高まる矯正治療中の管理――つづいて,沖田先生に矯正歯科医の立場から考える予防についておうかがいできたらと思います.沖田 私が矯正歯科医として日々診療している立場で申し上げますと,「矯正治療こそ最大の予防」だと考えています.早期接触があったり,噛み合わせが悪いと,咬合力が1点に集中してしまい,歯周病罹患歯の場合は骨吸収が進んでしまいます. その予防としては,咬合力が分散するようにきちんと犬歯誘導をさせ,アンテリアガイダンスと臼歯離開咬合を付与します.臼歯への咬合の負荷を避けることで,楔状欠損,知覚過敏,歯牙破折を防ぎます. また,上顎前突では唇が閉じにくく口呼吸になり,口の中が乾燥します.その結果,唾液による自浄作用も減少し,歯周病,う蝕のリスクも高まってきます.矯正治療というと,多くの患者さんは見た目だけを言いますが,嚙み合わせをきちんと整えることによって,う蝕や歯周病の予防になるのではないかと思います.――具体的にどういうものを使ってリスク管理をしていますか.沖田 う蝕が疑われる部位は,ダイアグノデントペン(図3)を使って早期発見を心がけています.矯正治療中はう蝕や歯周病のリスクが上がりますので,クリーニングも2~3か月毎もしくは毎月1回など,個々の患者さんに合わせて期間を決めています.若林 患者さんにずっとメインテナンスに来ていただいていたのに,突然大きなう蝕が見つかってしまったというのが医院としては一番困ります.隣接面う蝕は,どこまで進んだら介入する検査結果のデータを管理するシステムが大事――つづいて,若林先生に臨床家の立場から,リスクを把握するための検査に関してお話しいただけたらと思います.若林 患者さんは「歯が痛い」「詰め物がとれた」「歯茎から血が出る」などいろいろな主訴をもって当院に来院されます.それらの主訴に対し,「まず,なぜそうなっているのか?」を検査します.症状の背景には,食生活,生活習慣,ブラッシングの状態といった何かしらの理由があります.ですから当院では,主訴が解決したら「あなたのお口の中がこうなる原因を一度検査してみませんか?」と全体的な検査を勧めています.その際は,歯周組織検査はもちろん,デンタルエックス線写真,パノラマエックス線写真,CBCTなども撮影します. まず,SMTで唾液検査をして,モリタ社のトリニティコア(図2)でそのデータを集約します.それにより,患者さんに「あなたの今のお口の中はこういう状態ですよ」と説明できます.先ほど天野先生がおっしゃったように,言葉だけで伝えても患者さんは右から左に忘れてしまいますので,ビジュアルに見せる,あるいは数値化す若林健史東京都渋谷区開業・若林歯科医院歯科医師48図2 院内データ総合管理ソフト“TrinityCore3”[発売:(株)モリタ].
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