デンタルアドクロニクル 2022
77/188

75山﨑長郎氏 X 尾島賢治氏とはできますが、歯を作ったり、形態を整えたり、色の問題は介在できないので、上手な補綴の先生がいらっしゃると安心して治療することができますし、矯正だけで噛ませるのは無理があると思います。成人の場合、とくに咬耗していたりする場合、最後補綴の先生がしっかりサポートしていただけると思うと、無理のないプランニングで安心して治療に専念することができるので、いつも山﨑先生には感謝しております。──一般開業医がアライナー矯正治療を取り入れるケースが増えて、矯正医と補綴医とのタイアップが今後多くなることが予想されます。最低限、理解しておくべき事柄はございますか?山﨑:お互いの職域で尊敬し合いますが、基本的な矯正の知識がないと突っ込むことすらできません。そのため、私は以前、矯正医に「50ケースくらい相談させてください」といったことがあります。50ケースもあれば、微に入り細に入りいろいろありますが、これは抜歯ケースだな、こちらは非抜歯ケースだな、とある程度の判断能力はついてきます。尾島:山﨑先生によくお伝えするのですが、日本臨床歯科学会の先生方は矯正に限らず、規格性はもちろんドキュメンテーションや口腔内写真の撮り方など、基本がしっかりできています。可能な治療選択肢を患者さんに提供するのが、私たち術者の役割山﨑:尾島先生のおっしゃるとおり、当学会会員の多くはある程度矯正の技量を身に付けていますが、新たな局面としてアライナーを取り入れた方がいいということで、尾島先生をお招きしています。 私はいつも治療選択において究極の一手ではなくて、ディレクションのうち1つか2つオプションを出さないといけないと思っています。あとは患者さんが選択すればいいだけの話です。たとえば、過去にマルチブラケット装置で矯正治療を受けた患者さんが再矯正する場合、治療期間や費用など考えると、間違いなくアライナー矯正治療を選択するでしょう。治療の満足度は人それぞれで満点を狙う患者さんもいれば、90点を狙う方もいます。中には50点を狙う方もいます。患者さんには選択の自由の権利があってしかるべきだと思います。睡眠時無呼吸症候群のニーズが高まる兆し──最近、睡眠時無呼吸症候群のケースも連携されているそうですが、その点いかがでしょうか?山﨑:日本で睡眠時無呼吸症候群の患者さんは300~350万人いるそうですが、実際はもっといるはずです。米国では3,000万人くらいいるそうです。これだけ飽食の時代にきたら、ますます患者さんが多くなるのではないかなと思います。 睡眠時無呼吸症候群についてはまだ道半ばで3、4ケースしか完璧に仕上げていないため、ある程度仕上げていきたいと思います。それには矯正医との連携は避けて通れず、そういう意味でこれからの歯科においてひとつの目玉になるのではないでしょうか。尾島:世界的にオーラルアプライアンスは新しいトピックスになっていて、一昨年の米国矯正歯科学会でもセッションが設けられたくらいです。ブラジルのDr. Christian Coachmanが「もっとも賢い歯科のオリエンテーションは気道だ」とおっしゃっていました。今まで見えなかったものがCPAPで容積が見えることで、気道に着目する先生が増えていっている気がします。また、睡眠時無呼吸症候群になる方は働き盛りの40~60代の方が多く、とてもニーズがある分野だと思います。 今回、山﨑先生とともに取り組んだ患者さんは口腔外科医の方で自ら気道を改善したいから外科矯正との依頼で治療がスタートしました。山﨑:睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数を無呼吸低呼吸指数と呼び、30回以上は重症といわれている中、さきほど尾島先生が例に出された口腔外科医の患者さんの指数は48回でかなりの重症でした。私たちがタッグを組み、治療に専念したことで7回まで下がったのは、我ながらすごいことだなと感じました。私は補綴医として長年治療にあたってきましたが、最後の締めくくりとして、睡眠時無呼吸症候群を見つめ直したいと思っています。──本日はありがとうございました。山﨑長郎氏1945年 長野県に生れる1970年 東京歯科大学卒業1974年 原宿デンタルオフィス開院尾島賢治氏

元のページ  ../index.html#77

このブックを見る