77尾島賢治氏 X 中田光太郎氏同じです。スキーもスノーボードも始めたことがなく、怖いという認識がある方は慎重な対応をとられるので、大丈夫だと思いますが、怖くないと思って治療をされる方のほうがかえって危険です。それは矯正医も一般開業医もみなさん同じです。アライナー矯正治療は世界的なトレンドの1つとして押さえておくべき中田:尾島先生からみて、一般開業医がアライナー矯正治療をすることについてどう思われますか?尾島:アライナー矯正治療はこれから10年先全盛期に入ってくると思います。その理由はおもに3つ挙げられます。 1つ目はマテリアル器材がどんどん進化していっていることです。たとえば、インビザインの素材がこれまで1層構造だったのが内側・外側・中央の3層構造のパテントが出てきたりしています。中には5層構造を出しているところもあり、日々進化してきています。また、スキャナーやシミュレーションソフトが毎年どんどんバージョンアップしています。 2つ目は世界の矯正学会でアライナー矯正治療がごく普通に講演されていることです。一昨年6月に開催された米国矯正歯科学会で「インビザライン矯正治療におけるバイオメカニクス」について講演させていただきましたが、全トピックスのうち22%がアライナー矯正治療の講演でした。それくらい米国の矯正学会も重要視していることがわかります。 3つ目は対患者さん向けにアライナー矯正治療のプロモーション活動をする新規事業の進出が目覚ましいことです。ということは、患者さんがすでにアライナー矯正治療を知っていて、今後患者さんからも質問が寄せられることがあるかと思います。患者さんが質問を投げたとき答えられないようでは、勉強不足と言われかねません。 アライナー自体、「知らない」「やらない」「できない」「悪い」といった具合に否定するのは簡単ですが、事実、患者さんのニーズや症例がどんどん増えてきて、アライナーが認知されている時代まできています。そのため、一般開業医に限らずすべての先生が、ご自身でアライナー矯正治療をするかしないかは別として、世界的なトレンドとしてきちんと押さえられたほうがいいと思います。中田:私たち一般開業医が診断においてここだけは勉強しておいたほうがいいということはありますか? たとえば、セファロ分析くらいは勉強しておいたほうがいいとかありますか?尾島:セファロ分析をすごく難しくとらえる方が多くいると思うのですが、確かに上顎切歯の角度はセファロがいちばん簡単に見ることができますが、それ以外の部分は、一般開業医の先生方が駆使されているCTのほうがより詳しく分析することができますし、安心して治療を進められるかと思います。たとえば顎関節、大臼歯、頬側の拡大、前歯のポジションはCTのほうが間違いなく細かく分析できます。矯正医と歯周形成外科医との新たな連携も視野に中田:私も日頃、診査・診断する際、必ず治療前にCT撮影をしますが、唇側・頬側の骨と軟組織の厚みをみて両方薄いと矯正の難易度が一気に高まります。そこで予防的にわれわれ歯周形成外科医が根面被覆をしたほうが根の露出のリスクが減り、従来難症例とされてきた症例に良好な結果をもたらすことができるようになります。今後、矯正医と歯周形成外科医がそれぞれパートナーをみつけて連携する時代がきている気がします。また、インプラントを埋入する立場として、上顎にインプラントを埋入するにあたって下顎の叢生を何とかしたいと思って矯正の先生と連携してやっていても思い通りの結果で返ってこない現状がありました。もし自院でアライナー矯正治療ができるのならば大きなメリットですし、尾島先生がおっしゃったようにこれから10年先、アライナー矯正治療がますます伸びるとしたら、やはりついていかなかいといけないし、その情報を一般開業医ももっていないといけないことがわかりました。あとは私たちも自分なりに勉強もし、そして尾島先生のようなアライナー矯正治療に長けている先生にアドバイスをいただきながら、少しずつ慎重に取り入れていきたいと思います。本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。中田光太郎氏1965年 京都府に生れる1990年 福岡県立九州歯科大学卒業1994年 医療法人社団洛歯会中田歯科クリニック開設2009年 医療法人社団洛歯会デンタルクリニックTAKANNA開設尾島賢治氏
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