デンタルアドクロニクル 2022
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2022年 歯科医療における感染制御スタンダード  巻頭特集17限的・特例的にPCR検査が認められました(図1)。2021年に入ってワクチンの準備が整い、「いざ大規模接種会場を作って国民へワクチン接種」となった際に医師や看護師だけではマンパワーが不足していましたので、歯科医師が注目されました。歯科医師は日常的に注射を行っており、歯学教育の中で筋肉注射、臨床検査などの教育は受けているので、「歯科医師であれば特例的に認めても良いのではないか」となったわけです。過去にあった歯科医師による医行為で医師法阻却がされなかった事例をふまえると、今回は特例的であっても歯科医師の医行為を国が認めたことは意義深いと同時に、今後何かあった時にきっとこの経験は活かされると思います。『あらたな感染症をふまえた歯科診療の指針』第2版での追加事項 2020年8月にリリースした『あらたな感染症をふまえた歯科診療の指針』をアップデートした内容として、2021年11月に第2版を公表しました。主な追加点として、歯科医療機関内で陽性が出た場合、また濃厚接触者が出た場合のフローチャートが挙げられます(図2)。感染状況の程度や病院の有無、保健所の動向であるとか地域やその時々によって状況はさまざまであるため、その点を含めて解説しています。近隣の医療機関が少ない場合や体調不良の際の目安にしていただければと思います。第6波に備えた感染予防策の継続 第一に現状の感染対策を継続していくことです。しかし継続するだけでも各医院の負担は大きくわれわれの調査では、恒常的に感染対策費として1割強ほどの経費増が重くのしかかっています。経営体力の乏しい小規模の歯科医療機関としては、なかなか厳しいものがあります。感染対策費として診療報酬上で「医科外来等感染症対策実施加算」による5点の加算や厚労省から交付された「感染防止対策の継続支援・コロナ患者診療に係る特例評価の拡充」による補助金(病院・有床診療所10万円、無床診療所8万円、医科歯科共通、対象期間:令和3年10月1日から12月31日までに掛かる感染防止対策に要する費用)等がありますが、継続的な支援ではなく、あくまでも一時的なものです。われわれが感染対策レベルを下げるわけにはいかないですし、感染拡大から1年半以上続いていることからも、仮に第6波が来なかったとしても現在の感染対策レベルは続けることになるので、公的な支援が必要です。国民皆歯科健診制度の実現に向けて 日歯として今後のビジョンの1つとして、口腔健康管理が感染症の発生リスクを減らすこと、特に重症化予防に効果があることを繰り返し広報展開していくことだと思います。 あとは、大きな話になりますが国民皆歯科健診の実現です。努力義務も含め公的な歯科健診は妊産婦歯科健診、乳幼児歯科健診、学校歯科健診、成人歯科健診などがありますが、すべてのライフステージでつながるようにしたいと考えています。以前から、健診制度を義務化することで健診率を高めるという考え方がありましたが、今は政権公約にもなり、山田 宏事務局長、古屋圭司会長らを中心に自民党「国民皆歯科健診実現議連」が実現に向け準備を進めてくれています。国民皆歯科健診制度が実現すれば健診がより身近になるので歯科の受診率は上昇しますし、口腔の健康度を高めると同時に感染症対策にもつながるものと考えています。国が主体となって行うことで、十分な歯科保健予算が確保しやすくなるのも追い風です。 また、国民皆歯科健診制度を実際の現場に落としこむことが重要になります。広めていくのは厚生労働省とわれわれ歯科医師会ですし、実際に現場を動かすのは各都道府県歯科医師会になりますが、日歯としてしっかりと連携をとりたいと考えています。そのためにまずは、国として労働安全衛生法を含めた新たな制度に向けた法整備を進める必要があります。図1 これまでの歯科医師によるワクチン接種の実績。図2 一般診療所におけるCOVID-19に対する行動フローチャート。

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