デンタルアドクロニクル 2023
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gakKuotoDt. Ma巻頭特集1-310No Dentistry, No Wellness! 継承と革新から創造する歯科の未来 この10年、歯科業界はデジタルにて大きな変革を遂げてきた。近年のデジタル化によって、間違いなく作業環境はよくなりつつある。筆者は世の中のデジタル化において、この歯科業界がもっとも恩恵を受けてきているように感じる。まさに歯科業界の「産業革命」ではないかと考えている。ひと昔のアナログな写真を思い出してほしい。背景や、映り込んだ被写体においても、加工できないことが当然の状況であった。しかし、今のデジタル写真においては、加工ソフトの能力の向上も含め、背景の状況や光の当てる方向、また被写体が人物であれば、肌の色や目の色、髪の毛の色など、あらゆるものが変更・修正可能となってきた。まさにひと昔前にくらべ、クリエイティブな環境に大きく変化し、まるで違う仕事であるような環境になってきている。それらの変化と同様に、歯科技工業界においても、新たなビジネスモデルやサービスを生み出し、歯科技工士は「新たな価値をもった職業に生まれ変わる」環境が整ってきた。今後の課題として、「若い人にとっていかに魅力的な職業にすることが急務」であると考え、ITを目指す若者が増えている中、歯科技工業界のデジタル化をおおいに推進させ、デジタルに精通した歯科技工士の養成が不可欠ではないかと考える(図1)。 超高齢社会において、質の高い歯科医療を提供するためには、歯科補綴装置が適切に提供されることが重要である。一方で、歯科技工技術の高度化やデジタル化、就業歯科技工士数の減少など、歯科技工士を取り巻く状況は大きく変化しており、歯科技工士が働きやすい環境づくりや、歯科技工業務のありかたや効率化の必要性が指摘され、2022年の4月より、歯科技工士法施工規則の一部改正にともない、CAD/CAM装置等を用いた自宅等でのリモートワークが可能となったことから、「歯科技工士は職場に行かなくてもよくなる」ようになるかもしれない。 今後、機械化・自動化が進み、機械化が可能な作業と、歯科技工士の能力と人手による技工作業との線引きがはっきりしてくる。各種補綴装置や義歯の設計等の設計等はAIに置き換わり、深層学習させることで、現在の匠の技とされているベテラン歯科技工士の技術だけではなく、個性やデザイ陸誠(くが・まこと)歯科技工士1978年 大阪歯科学院専門学校卒業 1978年 株式会社クワタパンデント入社 1983年 株式会社コアデンタルラボ横浜入社 1988年 日本歯科技工士会認定講師 2006年 株式会社コアデンタルラボ横浜専務取締役 現在 株式会社コアデンタルラボ横浜代表取締役社長 ンセンスなども各個人に合った学習をさせる事も可能となってくる。まさに人とロボットの協業を考えなければならない環境になってきている。今後は、「時短と価値の最大化」「生産性の向上」が不可欠となるであろう。 「人工知能(AI)がどんなに進化しても想像力は人間のものだ」などと筆者も思いたいが、軽々と人類を超える時が来るかもしれない。現在の人工知能は、正しいと判断できる人間とセットでなければ役には立たない。いくら能力の高いAIであっても人間といっしょでないと機能しないのであれば、あくまでも道具にすぎない。しかし、運転が上手な人間と一緒にいるAIはより上手な運転を学習し、どんどん上手くなっていく。同じことが歯科技工業界にも当てはまることとなる。AIは一定の枠内で収集された、過去のデータから過去の延長にて未来を予測するだけで、新しい価値による未来の新製品等を生み出すことは人間にしかできない。AIで、イノベーションを起こして逆転ホームランを打てるなどということは決してない。人工知能(AI)と共存する未来においては、コンピューターに使われるのではなく、使いこなはじめに:歯科技工士は、さらなる職種へ飛躍しよう!どうなる歯科技工士の未来予想図AIは歯科技工業界を幸せにできるか?継承と革新から創造する歯科の未来―歯科技工士の立場から―

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