デンタルアドクロニクル 2023
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No Dentistry, No Wellness! 継承と革新から創造する歯科の未来  巻頭特集12021年 「World Orthodontic Health Day」のポスター。 矯正歯科が変われば、今後の歯科教育が変わる可能性も?1899年Angle EH不正咬合の分類発表歯並びではなく咬合の治療へパラダイムさらなる継承と革新へこの新たな矯正装置は、わずか20数年の間に国内外で1,300万人を超える依頼があるほど人びとに受け入れられている5。またこの装置を取り巻く環境は日々変化しており、多くのメーカーの参入も相まって、改良と品質向上、そして各製品の差別化がなされているように見受けられる。 しかし、アライナー矯正治療の隆盛が呼び起こした状況は手放しで歓迎されているものではない。たとえば、日本矯正歯科学会ホームページのトップページには「学会からの重要なお知らせ」として「矯正歯科治療における昨今の問題点」6「マウスピース型矯正装置による治療に関する見解」7が掲示されており、「(アライナーを直接業者から患者に配送するなど)適切な診察、検査、分析、診断、治療経過の確認を疎かに行ったアライナー矯正は、予期せぬ大きな問題を引き起こす可能性があり歯科医学的観点から非常に危険です」「医療機器として認められていない機器で作製されたアライナー(雑品)による歯の移動結果は保証されない」などと警鐘を鳴らしている。 矯正歯科治療を行う歯科医師は、本ページを熟読する必要がある。良質な歯科治療、特に矯正歯科治療では術者に専門的知識が求められ、術者と患者が目指す方向が同じであるはず・あるべきであり、またそれはどの矯正装置1907年Angle EHOrthodontiaとは不正な歯の咬合状態を治療すること2021年JAO日本版創刊日本でSureSmile提供開始を用いても同様である。いかなる矯正歯科治療においても機能的要因と社会心理的要因を有する不正咬合の改善という目標があり、治療に対する患者の期待が大きいことを、医療を提供する側は強く認識してほしいと切に願う。 一方で、1万人超のフェローと日本矯正歯科学会を含む114の関連組織からなる世界矯正歯科連盟(WFO)は、2021年「World Orthodontic Health Day」のポスターに、「Whether you choose Braces or Aligners(ブラケットとアライナー、どちらを選ぶ?)Choose a Specialist Orthodontist for Orthodontic Care!(矯正歯科治療では矯正専門医を選びましょう)」とのコピーと、審美的なマルチブラケット装置、そしてアライナー型矯正装置を装着した口元を並べている。ここから、海外では一般的な矯正歯科治療としてこの2つが肩を並べるものと受け取られていることがうかがえる。 こうした状況のもと2021年、クインテッセンス出版からJAO(Journal of Aligner Orthodontics)日本版(年6回偶数月刊)が創刊された。筆者は同誌英語版(2017年創刊、季刊)を一読者として興味深く手にしていたが、日本版ではLocal Advisory Board(LAB)のひと1926年Angle EHエッジワイズ装置開発歯体移動が矯正歯科治療に導入される2017年JAO英語版創刊日本でClearCorrect提供開始アライナー矯正歯科が学術として出版2. 日本学校保健会 思春期の学校歯科保健推進委員会.実践‼ 思春期の歯・口の健康づくり~実践事例集~.https://www.gakkohoken.jp/books/archives/219,2019.3. 岡藤範正(監修).日本版オリジナルページ 知っておきたい矯正歯科学の基本の「き」7 不正咬合における診断.JAO日本版 2022;2(6):103-105.4. 飯田順一郎,葛西一貴,後藤滋巳,末石研二,槇宏太郎,山城隆.歯科矯正学 第6版.東京:医歯薬出版,2019.5. インビザライン・ジャパン株式会社.企業情報.https://www.invisalign.co.jp/company(2022年12月13日アクセス).6. 日本矯正歯科学会.矯正歯科治療における昨今の問題点.https://www.jos.gr.jp/asset/info_ 20220715_02.pdf,2022.7. 日本矯正歯科学会.公益社団法人 日本矯正歯科学会 ポジションステートメント マウスピース型矯正装置による治療に関する見解.https://www.jos.gr.jp/4348(2022年11月30日アクセス).参考文献1. 厚生労働省.平成28年歯科疾患実態調査.https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-01.pdf,2017.1997年・1998年米国でInvisalign、翌年にSureSmile提供開始アライナー矯正歯科潮流の幕開けパラダイム2006年米国でClearCorrect日本でInvisalign提供開始アライナー矯正装置の多様化パラダイム151982年口唇・口蓋裂に起因する咬合異常に対する矯正歯科治療が保険適用になる保険診療に矯正歯科治療が導入される2012年日本で歯科矯正用アンカースクリューの薬事承認固定源の多様化りとして、主に英語に堪能な本学教員とともにシステマティックレビューなどの翻訳や矯正歯科の基本知識・専門用語の解説などを担当している。創刊から1年余りを経た今、LAB、そして一読者としての立場から、日本語で世界各国におけるアライナー矯正歯科の良質な情報を得ることができる雑誌は本誌のみであり、有意義と考えている。 アライナー矯正治療はまだまだ未知の治療法であるが、当初もっていた「矯正歯科分野の魅力がさらに輝きを増すきっかけとなりうる」という期待が、確信に変わりつつある。今後の歯科界の人材がアライナー矯正歯科を含め矯正歯科についてより学び、本分野がさらに発展することを祈念する。世界と日本における矯正歯科の展望と可能性を見つめるシフトパラダイムシフトパラダイムシフトパラダイムシフトパラダイムシフトシフトシフト

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