デンタルアドクロニクル 2023
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再評価大きい小さい介入の程度nihita IsrihitoDr. No歯列・咬合観察(小帯・過剰歯・埋伏歯)乳歯列期0期治療外科的対応習癖指導う蝕・歯周病予防混合歯列期Ⅰ期治療口腔機能観察永久歯列期巻頭特集1-616No Dentistry, No Wellness! 継承と革新から創造する歯科の未来 「いくら素晴らしいものをつくったとしても、伝わらなければ存在しないのと同じ」――これは故スティーブ・ジョブズ氏の言葉です。MacBook Airは大ヒットを記録しましたが、それは製品自体が素晴らしかった以上に、ジョブズ氏の「伝えかた」が素晴らしかったからです。 視点を変えると、歯科医院についても同じことがいえます。いくら質の高い治療や予防指導を行っていても、その大切さが患者さんに伝わっていなければ、残念ながら意味がありません。 何かを伝えるときには、まず相手が何を求めているのかをはっきり理解しなくてはなりません。 「ブラック・ジャック」や「ドクターX」のように、重症になってから神業で治す医療は、漫画やドラマの話。患者さんが本質的に求めている医療ではありません。患者さんが求めているのは、「不健康にならないよう、健康を維持してくれる」医療です。石谷徳人(いしたに・のりひと)医療法人デンタルキッズ イシタニ小児・矯正歯科クリニック(鹿児島県)理事長。小児歯科専門医指導医、歯学博士、鹿児島大学歯学部臨床教授(2022年度現在)、公社)日本小児歯科学会副理事長、MMP研究会主宰。著者に『早期治療 成長発育のエビデンスと治療戦略』(弊社刊・共訳)、『ザ・クインテッセンス別冊 小児歯科・デンタルホーム YEARBOOK2016』(弊社刊・共著)のほか、歯科専門誌への寄稿多数。Ⅱ期治療 これは歯科医療も同様で、「自分の歯のような補綴物を入れて、再び自分の歯のように噛めるようになった」というのは素晴らしいことですが、患者さんが本質的に求めているのは、「いつまでも自分の歯で噛める」ことです。 しかし、そのための行動がともなっていないのが実情です。歯みがきにくわえての歯間清掃、歯科への定期受診などの重要性は、昔から啓発されているにもかかわらず、実行できている人はまだひとにぎり。正しい口腔の健康観をもてていない人は、大切だと頭ではわかっていても、実行に移せていないのですね。 大人になってからその人の価値観を変えるのは大変です。自分の健康を損ない、大きなショックを受ければ変わることもありますが、それでは手遅れ。ですから、「継続的な口腔管理の重要性」を、小児期から実感してもらうこと、つまり小児期から「正しい口腔の健康観を育成すること」が大切です。そしてそのためには、歯科医院からの「健康教育」が重要になります。 みなさんは「デンタルホーム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。2000年代初めから米国で提唱されている概念で、「1歳からの包括的かつ継続的な口腔管理」を推奨しています。低年齢のころから口腔管理をし患者さんの本質的なニーズとは健康教育生涯における口腔の健康のベースとなる「健康教育」「伝える」より「伝わる」――歯科医院からの情報発信のカギ

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