デンタルアドクロニクル 2023
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No Dentistry, No Wellness! 継承と革新から創造する歯科の未来  巻頭特集1●当院で作成した説明資料の一例。チェアサイドで患者さんにご覧いただきながら、説明に活用しています。●いまでこそ300枚近くの資料をiPadで患者さんにご覧いただけるようにしている当院ですが、はじまりはたった数枚の資料でした。ておくほど、小さなコストでも将来大きな健康財産となって返ってくるという考えで、健康教育の重要性を示す例といえます。 では、「継続的な口腔管理の重要性」を患者さんに伝えるにはどうすればいいのか。伝わる情報には、①わかりやすい表現で、②視覚的で、③整合性が取れていることが求められます。 たとえば歯周病が起こる仕組みについて患者さんに説明するとき、言葉だけの説明で伝わるでしょうか。私たち歯科医療者は今まで学んできた知識があるので、説明しながらそのありさまを頭に思い浮かべることができますが、患者さんには無理な話です。もしうまく伝わったとしても、言葉だけの描写では、患者さんによって情報の受け取りかたに差が生じます。 さらに、スタッフによって説明が食い違っていたらどうでしょう? 話す人によって内容に矛盾やブレがあると、何が正しいのか、患者さんは混乱してしまいます。 それらの問題を解決する答えはじつはシンプル。医院で「説明資料」をつくることです。みなさんは、患者さんに説明をする際に、図やイラスト、写真などを活用されているでしょうか。 患者さんにとって、百聞は一見に如かず。視覚的にわかる資料はイメージしやすく、同じ資料をもとにした説明なら同じ受け取りかたになりますし、スタッフ間での伝える内容のブレをなくすことができます。 また、いまの時代、スマホやパソコンで多くの情報が手に入りやすいものの、ネットの医療情報には誤りが多く、一般のかたがそれに基づいて自己判断するのは非常に危険です。そのため、医院からの情報発信にも、「健康教育」の視点が求められます。 患者さんに説明する際は、「う蝕」「歯肉」などの専門用語は極力避けるのはもちろん、表現も中学生が無理なくわかるレベルにするのがいいでしょう。 口数の少ないかたには、こちらから声をかけ、潜在的な不安や不満を引き出すようにします。ガス抜きを小まめに行うと、後々のクレーム対策にもなります。 そして何より笑顔。元気いっぱいの朝一から、一日の疲れが見えはじめる夕方まで、同じ笑顔で対応できるよう心がけましょう。 意外に見落としがちなのが、ホームページに記載してある情報との整合性です。医院立ち上げ時につくって、何年もそのままになってはいないでしょうか。ホームページを見て来院する患者さんも多いので、そこに書かれている内容と実際の説明が食い違っていると、困惑のもとになります。 そして、情報の説得力に影響するのは、その言葉の裏にある「思い」――歯科医院の医療理念や行動目標です。 たとえば当院なら、「いつまでも自分の歯で患者さんが健康で楽しい生活を送れるよう支援する」という理念を掲げ、「理念を理解してくれる患者さんに最大限の医療を提供すべく努力する」という行動目標を立てています。こうした理念や目標に根差して伝えられる情報は、話す人の思いが裏打ちされ、自然に説得力が生まれます。 説明用の資料がない、またはあるけれど十分に活用できていないという先生は、まずは1枚、患者さんからよく聞かれるテーマをもとに、資料をつくってみてはいかがでしょうか。 スタッフとお互いに意見を出し合ってつくりあげることで、おのずと理念や目標の共有と、情報の整合性を取ることができます。患者さんに伝わりやすい図やイラスト、表現を考える際は、月刊「nico」などの患者向け媒体を参考にするのもいいでしょう。17説明資料をつくって活用しよう!「思い」があれば説得力が生まれる説明資料の活用が、伝わる指導の早道!

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