デンタルアドクロニクル 2023
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ro KadoDr. Shota巻頭特集1-718No Dentistry, No Wellness! 継承と革新から創造する歯科の未来 2023年の歯科界は、誤解を恐れずに言うならば“プチ宗教化”へ向かうと思います。昨年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針2022)」に「生涯を通じた歯科健診の充実(国民皆歯科健診)の具体的な検討」と明記され、現在は「治療から予防へ」という歯科医療が注目されてきていますが、つい最近までは問題解決型(治療)の歯科医療が展開されてきました。 歯科医院の院長は、患者さんの口腔内の問題についてスタッフを多く動員して対応・解決するなど、これまでは歯科医院もチェアの台数によって救える患者さんの数が決まっていたわけです。しかし、これからは健康になりたい患者さんに対して、価値提案型(予防)の歯科医療を理解してもらう流れに変わっていくでしょう。 その流れになった時に問われるのは、いかに地域に根ざした歯科医院となれるかが重要になってきます。そのためにはスタッフが長く勤務する必要があり、次に挙げる①歯科衛生士と患者さんとの関係性②院長のファンになっているか——の2つが重要なキーになると思います。 そしてこれからのリーダーに問われるスキルは、「時間軸で細かく伝えることができるか」が求められます。歯科医療は価値のある社会貢献ですから、現場のスタッフが院長の想いを理解すれば長く勤務されると思いますし、患者さんにもその考えを伝えられるはずです。そうすると院長は、患者さんを口腔から健康に導くエバンジェリスト(Evangelist)になれるでしょう。そのためには、自分の歯科医院をもっと地域にアピールすることが大切になってきます。 もちろん、院長の中には営業(アピール)することに抵抗ある方はいるでしょう。問題解決型の歯科医療を展開していた時代は痛くなったら患者さんが受診するので、営業しなくて良かったわけです。しかし、価値提案型の歯科医療は困っていない患者さんに予防を提案(営業)するわけですから、その歯科医院がどのようなビジョンで地域の患者さんの健康を管理していくのか、患者さんにその考え方を理解していただくことが必要になります。 コロナ禍によるマスク社会は、社会全体の健康を損ないたくないという予防の意識が過去最高に高まっている表2005年、東京歯科大学卒業。2009年、同大学大学院解剖学講座にて博士課程修了(歯学博士)。同年、医療法人海星会勤務、同法人副理事長・株式会社DENRICHE 代表取締役を経て、2017年、株式会社clapping hands 代表取締役。角 祥太郎(かど・しょうたろう)歯科医師、株式会社clapping hands 代表取締役れといえます。健康のハブともいえる歯科医療機関がコンビニより多いことは、けっして悪いことではなく社会にとってはむしろ喜ばしいことです。 コンビニに置いてある商品を見ても「○○品目の野菜が……」「低糖質高たんぱくで……」「免疫力を高める……」など、商品のラベルに健康に関する言葉が散見されます。また、食べ物だけでなく健康に関する商品は、コロナ前から比べると爆発的に増えました。さらに街中をジョギングする人も増え、空きテナントにスポーツジムが入り、健康意識からかサウナも爆発的なブームになっています。 食べるものに気をつけて、適度な運動で免疫を低下させないように身体のセルフケアをする……。これらは、われわれ歯科関係者がコロナの前から伝えようとしていた「心身ともに良い状態から落ちないようにしましょうね」という、まさに予防のことなのです。 コロナによって社会が大きく変化した2020年は、社会全体の公衆衛生の意識が向上した「公衆衛生元年」、2021年は公衆衛生が当たり前になった「公衆衛生当たり前年」、2022年は健康バブルとなった「健康意識元年」、そして2023年は予防が文化となる「予防意識元年」といえるのではないでしょうか(図1)。2023年の歯科医院は“プチ宗教化”へこれからのリーダーに問われるスキルとは?楽しそうな歯科関係者こそが未来!

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