No Dentistry, No Wellness! 継承と革新から創造する歯科の未来 巻頭特集1図1 2020年は、社会全体の公衆衛生の意識が向上した「公衆衛生元年」、2021年は感染予防対策などの情報によって公衆衛生が当たり前となった「公衆衛生当たり前年」、2022年は健康バブルとなった「健康意識元年」、そして2023年は予防が文化となる「予防意識元年」となる。 コロナの前から私たち歯科医療従事者は、「患者さんにどうやったらうまく伝えられるのかな? 治すばかりではなくて、そろそろそういうことも伝えていかないとね」と意識していました。社会の健康への関心、予防への興味は、元々歯科がこれから担っていこうとしていたところなのです。 コロナ禍で臨床現場におけるデジタル化はさらに加速していくことは間違いありませんし、問診や診断もますます効率化されていくでしょう。しかし、患者さんの健康教育だけは一朝一夕にはいきません。残念ながら特効薬はなく、私たち歯科医療従事者が提供する情報が患者さんにきちんと伝わっているかを確認することが求められます。 これまでの問題解決型の歯科医療では「患者さんには何度も言っているんだけどね……そうかぁ伝わっていないのか。何か悪かったのかなぁ」で終わっていました。価値提案型の歯科医療では、「伝える」だけで終わりではなく、患者さんと、スタッフと、スタッフ同士、患者さん同士との会話から気づきが生まれる、その先の「伝わる」が必要なのです。価値提案型の歯科医療には、診療以外の対人関係、つまりコミュニケーションは不可欠です。 2023年は「あそこの歯医者さんがいいって聞いたから来たんだけど、お出かけする前にちょっと歯を診てくれませんか……」という患者さんがさらに押し寄せてくるでしょう。チェアサイドの患者さんが健康でありたいという心に火をつけることで、その患者さんが紹介をしてくれて、紹介が紹介をよぶことで地域医療での価値が高まっていきます。2023年を機に、歯科から日本の健康寿命は延びるのです。健康を損ないたくないという気持ちがマスクに現れている今こそが、これまで以上に患者さんが健康でありたいという心を動かす大チャンスなのです。 このようなことから、私たち歯科関係者の未来は間違いなく明るいといえます。だからこそ歯科医院を引っ張る院長が、楽しそうに未来を語るリーダーシップを発揮してほしいのです。予防とは、長いお付き合いと適度な提案です。勤めているスタッフに想いを伝えて、「ここにいたら君はこうなっていると思うんだ!」と未来を語り、そして「今日はこうしてみたいと思うんだけどどうだろうか?」などと、今やる出来事をディスカッションしましょう。コミュニケーションの質と量に重きをおき、患者さんのファンをさらに増やしましょう。健康な方に指名される医療従事者になりましょう。健康な方がみずから足を運んでくれる医療機関、健康な人に健康に関する気づきを届けることができる医療機関、それが歯科医院です。 正解はないかもしれませんが、院長の中にはすでに明確な答えがあるはずですし、正解がないならばすべてが答えになり得ます。どうすればうまくいくかという「方法論の時代」から、あなたが何をやりたいのかという「理由の時代」になります。治療という「問題解決の方法の時代」から、予防という「価値提案型の理由の時代」が到来しているのです。 私がこれまで院内セミナーなどでかかわらせていただいた歯科医院では、イケてる雑談(コミュニケーション)が多い気がしますし、結果的に大きく成長しています。上から下への報告・連絡ではなく院長みずからの想いを言語化し伝える。院長や歯科医院が目指す共通目標に対して、下から上への報告・連絡・相談ができる仕組みができ、院長を中心としたコミュニティが形成さればきっと歯科は「伝える」から「伝わる」医療へと変わっていくことができるはずです。(談)192020年2021年2022年2023年感情予防文化に健康バブル情報これからの歯科医療は「伝える」から「伝わる」へ楽しそうに歯科の未来を語るリーダーが必要リーダーはみずからの想いを言語化する公衆衛生元年公衆衛生当たり前年健康意識元年予防意識元年
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