Quint DENTAL AD Chronicle 202330――先生は大学院でニッケルチタンファイルの研究をされていたと伺っています。そもそも、どうしてファイルを研究対象に選ばれたのでしょうか?林:私の父も祖父も開業医であり、私も臨床の道で生きていくつもりでした。そこで、大学院では臨床で役に立つ学びを得たいと考え、歯内療法分野を選びました。生物系や病理系を志望する人が多いなか、理工的な領域のニッケルチタンファイルは、ニッチな分野と認識されていましたが、ファイルは臨床で日々使用するものであり、研究すれば、きっと役に立つだろうと思い、選びました。――大学院ではどのような研究をされていたのでしょうか?林:私が研究を始めた頃、ファイルに用いる金属特性の違いにスポットが当たるようになってきており、そのような研究を行っていました。 その際、ファイルが破折しないことを目指し、どうすれば追従性が高く、複雑な根管形態でも折れずに使用できる曲がりやすいファイルが作製できるかなどを調べていました。追従性の代償として、切削効率がどうしても落ちるので、断面形態などの比較研究を行い、試行錯誤していました。 また、ファイルは1本の金属の丸棒を削ってミリングして製作します。削り出し前の丸棒を使った実験なども行っていました。 研究を進めるなかで、プロファイルというデンツプライシロナさんの製品には大変お世話になりました。このプロファイルは当時、全米でもかなりのマーケットシェアを獲得しており、その頃、論文で比較対象となるのは、ほとんどの場合、プロファイルでした。すでに各メーカーからさまざまな製品が発売されていましたが「比較するのはプロファイル」というのが定説になっていて、これと比較すれば、みなが対象となるファイルのレベルを大体把握できる、それくらいのシェアがプロファイルにはありました。そして、――プロファイルの後続としてプロテーパー・ユニバーサルが発売され、どのような点が変わったのでしょうか?林:プロファイルでは、根管形成にあたり、歯冠側から削っていって根尖方向に根管を形成するクラウンダウン法で行います。その際、テーパーの大きいファイルから徐々に小さいものに変え、8本ほどのファイルを使わなければなりませんでした。 そのようななか、プロテーパー・アルティメットの原型でもあるプロテーパー(現プロテーパー・ユニバーサル)が発売され、そのシークエンスは衝撃的でした。フルレングステクニックといって、ファイルを最初から作業長まで到達させ、根尖から根管を広げていく方法で根管形成を行うことになり、使うファイルの本数が5本ほどになりました。これは大きな変化で、初めてプロテーパー・アルティメットの原型は研究の比較対象として広く使用されていたいまだにユーザーがいると聞いています。プロテーパー・ユニバーサル発売時の驚き―切削効率と破折抵抗性を兼ね備えたプロテーパーブランドの最新型-GPから歯内療法専門医まで対応できるプロテーパー・アルティメットシステム林 洋介
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