Dentsply Sirona × 林 洋介 巻頭特集2③柔軟性に優れているため、アクセスの厳しい根管でも容易に挿入が可能である。④プロテーパー・アルティメットシステムにはファイルのサイズに対応したガッタパーチャポイントがある。――それでは、最後に、今後の歯内療にすむのです。 ただし、コア径が細過ぎるファイルは、再治療のための太い根管の形成には向きません。その点、プロテーパー・アルティメットは細いファイルのみでなく、再治療用の太めのものも揃えており、使い勝手がよいシステムだと思います。――ファイルの進化でよりミニマルな治療が可能になってきたということですね。その他に変化はありますか?林:根管充填の推奨方法もだんだん変わってきています。 一般的に使用されてきたシーラーは基本的に収縮するもので、何を使ってもあまり違いがありませんでした。そこで、収縮により生まれた隙間をどうやって埋めるか、すなわちガッタパーチャポイントをいかに緊密に充填するかが重要で、そのような研究が多く行われていました。 日本では、根管充填方法としては側方加圧根管充填法が一般的に用いられています。シーラーの改良が進み、石膏系の生体材料が使われると、これまでのように収縮するのではなく、硬化膨張するようになりました。収縮により、できた隙間を埋めることが課題だったのが、硬化膨張により隙間ができなくなって、シングルポイントテクニックという根管充填法が用いられることも増えました。 また、各ファイルに対応したガッタパーチャポイントが製品化されてきています。プロテーパー・アルティメットもウェーブ・ワンゴールドも、ファイルに対応するガッタパーチャポイントがあります。根管形成が終わったら、それらを使えばピタっとはまって完了するので、こんなに楽なことはないです。これは大変画期的で、術者はストレスフリーに治療を進めることができます。 昔はガッタパーチャポイントをハンドロールといって、手でこねて作っていて、同じ箱に入っているものでも、サイズの差が結構あったりしました。いまはサイズのばらつきも減り、マスターポイントの試適も楽になりました。これによってチェアタイムも短くなります。ファイルだけでなく、付随する道具も進歩しているのはすばらしいことです。法はどのような方向に向かっていくと思われますか。林:ファイルの理工学的な物性が向上したので、MIの概念を念頭に、コロナルフレアリング(歯冠側の削り込み)を大きくせず根尖部だけしっかり削るような根管形成が可能になってきて、根管充填にはシングルポイントテクニックが用いられることが増えるなど、治療全体がどんどん簡素化されています。このように、なるべくシンプルに治療を終わらせる方向に進んでいくと思います。できるだけシンプルな工程で、きちんと治療が行えれば、チェアタイムも短くなる。現在、ある程度のところまできていますが、まだ伸びしろもありそうだと感じています。ただし、シンプルな工程であっても歯内治療の生物学的なコンセプトは決して忘れてはいけないと思います。 自分自身でも、できる限りMIを心がけていますが、臨床では難しいケースもあります。それでも以前に比べたら圧倒的に削る量は減ってきた。それは確実にファイルの性能がよくなっていることが貢献していると思います。 今後もファイルなどの進化に対応しながら歯内療法のトレンドを取り入れ、患者さんにとってよりよい治療が行えるように精進していきたいと思います。――本日はありがとうございました。33
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