第9回日本アライナー矯正歯科研究会な治療オプションを備えておくのが矯正歯科治療に携わる歯科医師の責務ということも確かだと思われる。「温故知新」という言葉がよく口にされた本会であったが、古きに学び、基礎力を身につけたうえで新しい世界へと進んでいくという謙虚な姿勢が、常にこの世界では必要とされるのであろう。 次回の第10回日本アライナー矯正研究会は、当初から本会が開催されてきた東京大学伊藤国際学術研究センター伊藤謝恩ホールにて行われる予定。10年という記念すべき年に、現地開催へ戻ることができるよう心から願う。(了)手がけた症例が8千例を超えるというNarandr Chevangkul氏は、CBCT併用のClinCheck(Invisalign治療シミュレーションソフト)を用いた難症例治療について解説した。歯周組織や歯肉形態などさまざまな問題をもつ歯列に矯正歯科治療を行う際の装置や手技について語ったBjörn Ludwig氏。Ramon Mompel氏は、デジタル矯正歯科治療における上顎歯列弓急速拡大装置(DMSE)の併用について語った。来日しライブで講演を行うRavindra Nanda氏。新しい矯正歯科治療の展望と、矯正歯科医としてのあるべき姿を語った。本研究会についてはJAAOホームページをチェック!➡るメーカー依存の画一的な治療プロセスから脱却し、それぞれの矯正歯科医がもつ治療哲学や得意とする手法を反映し、より個々の症例や歯の移動状況に合わせたアライナーや治療計画を歯科医院で作ることができる。María José Viñas氏も述べたように、これによって歯科医師が治療のコスト、質、時間をコントロールできるというメリットがある。また複数の演者が、世界中で多数のメーカーにより追加アライナーを含むアライナーが大量生産・輸送されていることに触れていたことから、産業廃棄物と環境負荷の減少という点においても、第5世代アライナーに利点があるといえよう。 尾島氏は、あるアライナーメーカーにおいては患者1人のアカウント期限が初診から5年と決められているが、矯正歯科治療後の後戻りやそれを主訴とした患者の来院は、初診から5年以降にも起こりうるとして、メーカー主導のアライナー矯正治療の限界を指摘した。長期間にわたり患者をフォローアップし、後戻りが起こった場合に短期間・低コストで解消できる点でも、院内製造アライナーの利点があるだろう。 一方で山﨑氏が自身の講演の最後に指摘したように、見た目、疼痛のなさからアライナーは患者フレンドリーな矯正装置であり、患者から求められることも多いであろうが、技術と知識という治療に必要な基礎的能力が不足する歯科医師は難症例に介入してはならず、治療にレスポンシビリティ(業務遂行責任)をもつべきであること、もはやアライナー vs ブラケットという対立構造を論じるフェーズにはなく、状況や患者の要望に合わせてさまざま45
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