デンタルアドクロニクル 2023
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尾島賢治氏 X 瀧野裕行氏尾島賢治氏瀧野裕行氏1966年 ニューヨークに生まれる1991年 朝日大学歯学部卒業1995年 タキノ歯科開設2006年 医療法人社団裕和会タキノ歯科医院ペリオ・インプラントオフィス設立どれくらいありますか?瀧野:ペリオの患者さんに限らず、術前に「ちょっと動かしたい」と思う患者さんはものすごく多いですね。ほとんど9割以上ではないでしょうか。たとえば、アンテリアガイダンスがないとか、フルマウスの治療が必要な場合でもそうです。ちょっとした歯列不正を治すことで、その後のインプラント治療の予後も良くなるので、医療者からみて必要と思うケースは非常に多いです。実際、歯列が元々きれいで歯を失う人自体が少ないですし。尾島:なるほど。では、患者さんはペリオやインプラント治療の前に説明すれば、矯正を受け入れてくれますか?瀧野:歯周病は40代から進行し、その後欠損も進みますが、この年齢にもなってブラケットをつけて矯正をするかとなると、なかなか受け入れてもらえないのが実情です。「ペリオやインプラントの治療だけやってくれればいい」というケースが多いですね。尾島:欠損部にそのままシングルでインプラントを埋入できる患者さんは少なくて、先生からみると、まずは矯正治療から入る必要があると。瀧野:そうですが、ほとんど受け入れてもらえないです。そこで当院では、まず全顎的な咬合の重要性を理解して尾島:初診の患者さん全員ですか!瀧野:はい。それも、患者さんに一番人気のある時間帯、昼間なら3時スタートとか、昼間来られないなら6時からとか。候補日も6回分提示して都合の悪い日がないようにする。それくらいしないと、患者さんも「治療は行くけど健康教室はいいわ」となってしまう。こちらは「治療はいいから健康教室のほうが大事」と思って本気でお願いをしています。尾島:先生がお話をされるのですか?瀧野:そうです。何人かの患者さんと一緒に1時間お話をして、その後30分のディスカッション。それを月2回。健康教室では、結論として「8020(ハチマルニイマル)を維持している8020達成者を調べたら、7割以上の人が咬み合わせと歯並びが良かった」と伝えます。尾島:なるほど。瀧野:そこで、「人生100年時代の今、8020を達成するには、40代、50代、60代でこれから矯正治療してもおかしくないですよ」と説明するんです。尾島:まずは咬合や歯列の重要性を知ってもらうということですね。瀧野:ペリオやカリエスの話も含めて、全部まとめて1時間。ときにはフルデンチャーの患者さんもいますが、最初は「歯がないので関係ない」という方も、教室が終わった後では「自分は関係ないけど、帰ってから息子に話をするわ!」と喜んでくださって。とにかくタメになる話をして、受け入れてもらわないとダメですね。尾島:院長先生から直接話をしてもらえると、うれしいですよね。瀧野:なかには、「歯医者さんに行って“歯みがきして”と言われて、頑張って続けてきたのに、むし歯になり、歯周病になり、歯が抜けて……」という方がいるんです。そのような患者さんには「すごくきれいに磨いているし、これまでむし歯菌や歯周病菌がいっぱいいたということはありえなかった。あなたは噛み合わせの力の問題で、今までこうしてトラブルが続いてきたんですよ」とはっきりお伝えします。そうすると、患者さんはストンと腑に落ちるんですね。「何で私、こんなに歯磨きしてきたのに、それで歯が悪くなっていくんですね」と。尾島:そういう方は多いですね。瀧野:結局、「咬み合わせはものすごく大事で、そのために治療をして、その後も歯科医院で、定期的なメインテナンスで毎回チェックをすることが大切なんですよ」と、ここまで話をしてようやく理解される方が多いです。尾島:武器と守りみたいな感じですね。外科やインプラント、再生療法といった武器がある、だけど、メインテナンスと咬合という守りがきちんとできていないとダメで。瀧野:歯科医師は武器として治す方法をもっていて、それで患者さんが望んでいないところにインプラントを埋入しようとか、そういうことを考える先生も少なくないですが、実は予防と咬合というのが一番しっかり守ってくれる部分であって、そこをまず理解してもらうことが先決です。歯を失った原因を正しく伝えて、患者さんもしっかりと理解して、はじめて必要な治療が49もらうために、患者さん全員に健康教室を開いて、来てもらっています。患者さんに咬合の重要性を理解してもらうことが先決

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